人間は、いくつまで年齢を超えて異性を惹きつける力を保持できるものなのか。また、恋愛の対象相手との年齢差は現実的に、果たして何歳まで可能なのか。
文豪ゲーテは72歳にして17歳のウルリーケ・フォン・レウェツォという少女に本気で恋をした。年齢差は55歳。だが、恋は成就することなくゲーテは失恋の苦しみに呵まれた。
私が以前、提灯持ちをしていたことのある74歳の作家は45歳離れた美しい愛人がいた。おじいさんと孫くらいの年齢差だが、この2人の間は互いに深い愛情で結ばれていた。
若くて美しい愛人は、ただ作家の名声や財力に惹かれただけではなく、その人間性に強く惹かれたのだろう。この作家は精緻で流麗な文体で人の心の機微を立体的な臨場感で表現し、多くの読者に愛されていた。いつも着流しを閑雅にまとった洒落者で、頭脳明晰。周囲を楽しませる柔らかいユーモアのセンスと配慮があった。
また、相手が何を考え、望んでいるか、鋭い洞察力で人の心を読める人であり、神経質なまでに客人に心配りをするとても繊細な人であった。文壇の重鎮でありながら、無邪気な腕白坊主といるような愉しさがあると同時に、冷徹で何者にも左右されない強い意志が瞳に宿る無頼漢でもあった。
遠慮がちに微笑を浮かべた美人ガイド
中国シルクロードの要所である西安。かつて長安と称された街は、古代より王朝の都として千年の歴史を有している。最近では中国の水資源の事情から、近い将来、北京から西安に遷都されるといった噂もある。
街は鐘楼を中心に道が放射線状に延び、四角い城壁がほぼ完全な形で中心部をとり囲む。市内と郊外には、歴史的建造物や歴史上の重要人物のゆかりの場所が、いたるところに点在している。
チベットから青蔵鉄道に乗り35時間。西安駅に到着すると私は街の中心、鐘楼のすぐ横にあるユースホステルに荷物を置き、早速、晩飯にありつこうと2階のレストランのドアを開けた。すると、股下5センチのミニスカートをはいた少女らが酒をあおり、黒人とともにビリヤードに興じていた。
ここは中国の不良の巣窟のようである。ユースホステルでは本来あり得ない、宿泊以外の客に部屋を時間貸しする看板が掲げられている。どうやら若者のラブホテル代わりにも使用されているらしい。改革開放という自由は人間を堕落へと誘うのかと、ハイネケンビールをあおるミニスカートの少女を見て思うのだ。
翌日、西安市内を観光した。太陽が少し傾きかけた夏の昼下がり、私はある大きな寺院の門をくぐった。すると清楚な紺のブレザーの若い女性ガイドが話しかけてきた。