「本流トヨタ方式」の土台にある哲学について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。
ここ数回は「現地現物」に関してのお話です。ただ現地に行くだけでは意味がなく「何を見て」「何を読み取るか」が問題だ、ということをお話ししています。
現地に行って説明を聞くと、説明者の考えを鵜呑みにしてしまう危険性があります。学者に聞けば学界の「定説」に染まります。しかし、問われているのは「あなた自身の考え方」なのです。
「本流トヨタ方式」の産みの親、大野耐一氏は、「技術」という言葉をもとに様々な考え方を教えてくれました。いくつか例を紹介しましょう。
・「『それはできない、あれは無理だ』と否定ばかりする者を『欺述者(ぎじゅつしゃ)』という。口先だけで人を欺いて会社を潰すやつだ」
・「できないことを証明するより、できることを証明する方がはるかにやさしい。まず、できると思ってやってみよ。技術の術の字は、『行』うことを『求』めているのだ」
・「技術の術の字は、忍術の術の字だ。人ができないと思うことをやってのけるから偉いのだ」
こうした考えを、筆者たちは徹底的に叩きこまれました。
要するに「改善」とは、社会常識や学会の定説の縛りから自らを解き放ち、現地で現物を見て感じ取った「現在の情報」を基に、現在の因果関係を解きほぐし、明日の解決に向けての道筋となる「仮説」を立て、それを「検証」しながら実施していくことなのです。数年前の改善案が、今の会社にそのまま適応できることはないのです。
度肝を抜かれた運河の巨大豪華客船
さて、今回も1枚の写真を基に、筆者が「現地」で何を感じ取り、読み取ったかを説明しましょう。皆さんがご自分の仕事の中で、現地に行って現物を前にした時の考え方の参考になれば幸いです。
写真1は、1999年10月に筆者がアメリカのフロリダ州マイアミ港の近くで撮った写真です。前回、前々回と同様、この写真から何を感じ取るか、しばらく凝視して下さい。