中国経済は年率10%前後の成長を続けているが、インフレが高騰している。そのため政府は追加利上げを実施するとしながらも、基本的な政策スタンスは「適度な金融緩和の維持」(胡錦濤国家主席)を変えていない。

 インフレを抑制するために金融引き締めは必要だが、性急な引き締めを実施すると、景気がハードランディングする恐れがあるからだ。中国経済を取り巻く外部環境が急速に悪化しているのはそれが原因である。

対外債務の危機は考えられないが・・・

 世界経済は新たな金融危機の入り口に差しかかっている。欧米諸国で起きている債務危機のほとんどは、正確に表現すれば対外債務の危機だ。貯蓄率の低い国々で対外債務の返済が難しくなり、債務危機が勃発したのである。今回のギリシャ危機はその一例だが、かつてのメキシコ危機(1995年)も同じだった。

 だが、中国の対外債務は危険な状況にない。

 中国政府が発表している対外債務統計によると、2010年末現在、対外債務残高は5489億ドルであり、GDP比の債務比率は9.3%程度である。その上、中国政府が保有する外貨準備は3兆2000億ドルに上るため、対外債務のデフォルトの可能性がほとんどない。

 中国経済の10%前後の成長の原動力は、主に設備投資とインフラ関連の投資である。毎年の巨額の投資資金は主に中国国内でファイナンスされている。家計の貯蓄率は30%に上り、政府部門と企業セクターの留保分を参入すれば、国全体の貯蓄率は50%に達する。

 一方、中国政府はここ数年、景気を下支えするために、毎年、多額の国債を発行している。ただし、中国のGDPは約40兆元(約500兆円)であるのに対して、国債残高は6兆元未満に過ぎない。債務比率は20%未満である(ちなみに日本の債務比率は220%で、アメリカは90%)。