トルコで行われた総選挙は、大方の予想通り、経済成長も順調で、安定した人気を誇る現職のエルドワン首相率いるイスラム系与党・公正発展党(AKP)が3期連続で単独政権を維持することになった。
クルド労働者党での活動が指摘され当選抹消
しかし、新憲法を単独提議できる議席数までには至らず、世俗主義を守りながらもイスラム的価値観を高めようとするAKPがこれからどのように進んでいくかは、エジプトやチュニジアといった「アラブの春」後を模索する地域からも注目されるところだ。
そんな中、無所属で立候補し当選した36人(定数550)がクルド系の平和民主党(BDP)に合流した。
トルコの政党は1割以上の得票数がなければ国会議席が得られないことから、死に票を作らぬため無所属で出馬したものだったが、そのうちの1人が過去にクルド労働者党(PKK)の活動に従事していたとされ当選を取り消されてしまった。
今では平和路線を歩むことを表明しているものの、トルコばかりかEUや米国などからもテロ組織指定されているPKKという存在には、神経質にならざるを得ないのだ。
しかし、BDPは抗議の姿勢を示し国会をボイコットすることを表明、クルド人からの反発が高まりテロが活発化しないかとの懸念が拡がっている。
迫害を受けるクルド人により多発するテロ
ちょうど昨年の今頃、私はトルコにいた。その時、テレビで目にしたのがイスタンブールでのテロの光景。そして、イラク北部への越境攻撃のニュースだった。
トルコで迫害され続けるクルド人の人権向上を主張するPKKは、いまだテロ行為を続け、北イラクのクルディスタン(クルド人居住地域)はその拠点ともなっているのである。
思えば2003年、その地はサダム・フセインの圧政から米国が「解放」したはずだった。やっと訪れたクルド解放の時。1991年以来行方不明となっている父親を捜しに、バビロンにまでやって来たクルド人少年の物語が現在劇場公開中のイラク映画『バビロンの陽光』(2010)である。
クルド語しかしゃべれない祖母と幼い子供という頼りない2人組に、かつてクルド人殺戮に加わっていたことのあるアラブ人男性が加わるロードムービーだが、実際にイラク各地で撮られた映像は実に多弁であり、そして重い。