今月末から11月上旬にかけて、麻生太郎首相は衆院解散に踏み切るかどうか重大決断を迫られる。今解散すれば、次期衆院選は「11月18日公示→30日投開票」となる見通しだが、自民党の過半数割れは必至だろう。このため、与党内の意見は「早期解散」VS「年明け以降先送り」で真っ二つに割れている。もっとも、いくら「解散風」が強まっても、麻生の本音は先送りである。「負け」と分かっている選挙に突っ込むほど、麻生も愚かではないだろう。そうは思っていても、「小沢一郎(民主党代表)よりは上」と自信を持つ麻生が、一か八かの勝負に打って出る可能性もゼロではない。(敬称略)

 公明党国対委員長の漆原良夫は18日、金沢市内の講演で「今日の新聞を見たら、“国会は今、山本リンダ状況になっている” といいことを書いていた。どんどん走っており、“どうにもとまらない” ということだ」と下手なジョークを飛ばした。衆院解散・総選挙に関しては「走り出したら止まらない」と永田町でよく言われるが、まさに今はそういう状況。来年7月の東京都議選を控え、かねて年内解散を求めていた公明党にとっては、解散風が吹き荒れ、与野党議員が選挙に向け一斉に走り出すことは歓迎すべき流れなのだ。

 確かにここに来て、地元でプレハブの選挙事務所を借り、本格的な選挙準備に入った現職議員は少なくない。自民党幹事長・細田博之が10日に島根県松江市、元首相の森喜朗が13日に石川県小松市で相次いで事務所開きを行った。最大派閥・町村派幹部のこうした動きを見て「解散近し」のムードが高まらないわけがない。首相の地元・福岡県飯塚市にもプレハブの選挙事務所が設置された。麻生は「おれは全然知らない」と記者団に強調したが、周辺や地元がキナ臭さを感じて動いたようだ。

 次期衆院選の時期について、森は「年内なら11月23、30日がぎりぎりだ。それを過ぎれば2009年度予算編成後の来年にずれ込む」との見通しを示した。12月の予算編成時期の解散・総選挙は回避されるだろうとの見方は与野党に共通する。