つい最近まで、内閣府が東京タワー内に「感どうする経済館」という入場無料のミニ博物館を設けていたのをご存じだろうか。

東京タワー50周年、リリー・フランキーさんも記念イベントに

姿消した「感どうする経済館」〔AFPBB News

 官製施設としては珍しい変則的なネーミングは、「感動」と「どうする?」を掛け合わせたもの。国の借金の重さを実感できる「借金リュックサック」や、債務残高が目まぐるしく増えていく「日本の借金時計」などが展示されていた。筆者も知人と連れ立って見物に行き、分かりやすい内容に妙に感じ入った記憶がある。

 オープンしたのは2005年11月。郵政選挙に大勝した小泉純一郎首相(当時)が、第3次改造内閣を発足させた直後のことだ。開館式に出席した安倍晋三官房長官や竹中平蔵総務相、与謝野馨経済財政担当相は、1分当たりの借金増加額を示す6.5キロの重り(1万円を1グラムに換算、つまり6500万円分)が入った借金リュックを背負い、財政再建に向けた決意をこもごも語っていたものだ。

 観光や修学旅行などで訪れる子供たちにも国家財政の危機的状況を肌で感じ取ってもらおうという展示品の狙いには、この国を動かす政治家や官僚たちの良心の「かけら」が投影されていると思っていた。だが、どうやらそれは買いかぶりにすぎなかったようだ。

戦後初の異常事態、新規国債発行額>税収

 2009年度当初予算成立から間もない3月31日、麻生太郎首相は巨額の追加経済対策の裏付けとなる補正予算案の編成を指示した。その夜、財政の悲鳴を発信していた異色の博物館は、誰にも告げられないまま慌ただしく閉鎖され、国と地方合わせて800兆円に上る長期債務の累積ぶりを刻一刻デジタル表示していた借金時計も撤去された。

 それから半月足らず。仕上がった補正予算案の歳出額は14兆円。これまで最大だった1998年度第3次補正(7.6兆円)の2倍近い規模に達し、国内総生産(GDP)の約3%に相当する。もちろん目ぼしい財源などあるわけがなく、特別会計積立金からの繰り入れを除く10.8兆円は国債増発で賄われる。

 この結果、2009年度の政府予算は財政史に特筆される記録を残すことになった。