2代目ヴィッツ。市場からの反響を受けて初代よりも「成長」しつつ、キャラクターは変えないようにして、多少なりとも新しさを出したい、というスタイリングである。(写真提供:トヨタ自動車、以下同)
2代目ヴィッツの側面透視写真。初代に比べて、後席の膝前空間、後方の荷室などが拡大されている。新しさを表現したかったのだろうが、ノーズからウィンドウシールドへ、折れ目なくつながるような形にしたことも含めて、プロポーションが変化、やや間延びしたものになった。
2代目ヴィッツのインテリア。センターメーター、その下に伸びるコンソール左右の物入れなど初代の「型」を継承しようとしているのだが、それぞれの機能的裏付け、デザインとしてのまとまりは後退してしまった。
3代目のヴィッツ。さらに「成長」するとともに、スタイリングも現行トヨタ各車に共通するエグみの強いものに変わり、「可愛らしさ」はすっかり消えた。目つきはもちろんだが、外板の面も抑揚が強い。もっと論理的かつシンプルな「良き実用品」としてのデザインを期待したいところなのだが。
3代目ヴィッツの車室空間レイアウトと全体寸法。2代目よりも前後に伸ばしつつ高さを下げたが、居住空間は図面上はほとんど変わらない。実際に座ると後席空間は着座姿勢の設定が崩れ、頭の上後部が内張りに触れそうになる。コンパクトカーとしてのプロポーションも均整が取れた姿には見えない。
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3代目ヴィッツのインテリア。ガラリと変わったが、視認系、操作系などの配置や、それをつなぐデザイン処理の論理性が伝わってこない。実際に座ってみると、ステアリングホイールの取付軸そのものが低すぎるなど、人間の姿勢と運転操作系の基本的関係も煮詰めが甘い。型通りに作ったのだろうが、CADや標準化された数値に頼っているだけでは初代の「身体にフィットする」感じを再生することはできない。また、シートの造り、身体保持能力も、欧州製小型車とは大きな差がある。小さく廉価なクルマだから、シートもその分だけコストを削ってそれなりに、という論理は欧州では通用しない。
この1.3リッター、1NR-FE型エンジンを含めて、動力機構は基本的に先代そのまま。アイドリングストップ仕様の再始動機構を改変したが、走行時に摩擦損失が増える仕組みを選択してしまった。内燃機関と変速機、それが現実の路上で消費する燃料の削減など、基本的な部分で改良と進化を続ける欧州勢との間に「水をあけられ」つつある。日本では、メーカー自身も含めてその認識は薄い。