首相の麻生太郎が調子づいている。内閣支持率アップで機嫌は上々、得意の軽口も戻ってきた。それもこれも民主党代表・小沢一郎のおかげだ。小沢が代表を辞任しないから、麻生も救われている。今、麻生は衆院解散の「フリーハンド」を握った。解散時期は自民党内の大勢が7月サミット後を予想するが、こればかりは決して予断を許さない。(敬称略)
「ふるさとに はや桜咲く 故問えば 冬の寒さに耐えてこそあれ」
4月18日、新宿御苑で開いた「桜を見る会」。麻生は自信満々で自作の歌を披露した。もっとも、「はや桜咲く」は麻生の言い間違い。首相官邸詰めの記者が秘書官に確認したところ、正確には「はや桜満つ」という。自作の歌を誤って紹介するのも、いかにも麻生らしい。
それはさておき、麻生は挨拶の中で2008年度第1次補正予算、第2次補正予算、2009年度予算を「3段ロケット」に例え、これまで政府・与党が経済危機に対応してきた経緯を説明。そして、追加対策を盛り込んだ2009年度補正予算案を「4段ロケット」として、景気回復に念を入れる姿勢をアピールした。さらには、「冬の時代にずっと仕込んでいたわれわれの政策がいよいよ花開いてくる」と強調、桜になぞらえて政策効果に自信を示した。
政財界や芸能界の招待客との記念撮影には気軽に応じ、「総理、人気あるぞ。自信持ってやれ」と声が掛かると、「がははは・・・」と大笑い。「わが世の春」を満喫した。
しかし、好事魔多し、政界は一寸先は闇。「麻生さんがあまりに調子づいているのが怖い」(自民党幹部)と、はしゃぎ過ぎを懸念する声も少なくない。
4月15日夜、東京・虎ノ門のホテルオークラのバー。麻生は、元財務相・伊吹文明、法相・森英介、官房長官・河村建夫と会食した。席上、伊吹が麻生に「オウンゴールはするな」とクギを刺した話が政界に広まっている。13日の政府・与党連絡会議の場でも、自民党国対委員長・大島理森が麻生にオウンゴールに注意するよう求めていた。誰もが、麻生の失言が心配で仕方ないのだ。
内閣支持率が回復傾向にあるとはいえ、不支持率はまだその2倍もある。NHKは支持30%に不支持60%(4月13日発表)。時事通信は支持25.2%に不支持は53.8%(17日発表)。支持が多少上昇したところで、「これでは、まだ選挙は戦えない」と公明党幹部は慎重だ。
「8月解散」照準、公明・創価学会
その公明党は、解散・総選挙の時期を7月12日投開票の東京都議選からできるだけ引き離し、「8月お盆明け解散」を目指して働きかけを強めている。
一時期、公明党は5月解散-6月7日総選挙を、「都議選前のぎりぎりのタイミング」(幹部)と容認していた。しかし、党代表の太田昭宏が4月14日、「(都議選との間隔が)1カ月しかない短い時では、同じような選挙になる」と懸念を表明。13日夜に麻生に近い党副代表の東順治、15日昼に太田、同日夜には幹事長の北側一雄が相次いで麻生と極秘会談し、解散時期の先延ばしを猛アタックした。
関係者が党内事情を説明する。「公明党・創価学会は既に8月解散に的を絞っている。8月のお盆明けに臨時国会を開いて、解散。総選挙は9月6日か任期満了(10日)後の13日だろう」「都議選前に解散・総選挙をやられては、ダブル選挙も同然。疲れきって、都議選に全力投球できない。こっちとしては、衆院選は事実上の任期満了選挙にしてもらいたい」。その背後にあるのは、公明党の支持母体・創価学会の意向であろう。