(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
文部科学省は7月22日、薬学部の新設を2023年度から認可しない方針を決めた。その最大の原因は、厚労省が進めてきた医薬分業のおかげで、薬剤師が過剰になったことだ。
薬価差益で儲けるために医師が薬を過剰に処方する「薬漬け」をなくすため、病院が処方箋を出し、院外の薬局で薬を出すようにしたのだが、その結果、病院の前に並ぶ「門前薬局」が増え、医療費を圧迫しているのだ。
「門前薬局」の国民負担は7.7兆円
昔は病院でもらう処方薬と街のドラッグストアで買う市販薬がわかれていたが、最近は病院の処方箋を受け付けて処方薬を出すだけの調剤薬局が増えた。その数(薬剤師のいる薬局数)は約6万店。コンビニエンスストアより多い。
日本の薬剤師は32.2万人と人口あたり世界一多く、調剤医療費は7.7兆円にのぼる。これが国民医療費42.2兆円の2割近くを占めるようになったため、厚労省はその抑制に乗り出し、文科省は薬学部の新設を認めないことにしたわけだ。
これは逆である。処方薬の薬価が高いのは、薬剤師の利潤を確実に保証するからだ。調剤医療費は市販薬1.1兆円の7倍の市場で、そのうち1.9兆円が、薬剤師の取り分になる「調剤技術料」である。
このような浪費を減らすためには、処方薬にも市販薬のような競争を導入すればいい。その簡単な方法は、薬剤師の免許を廃止して資格認定にすることだ──こう書くと怒る人が多いが、これは薬剤師を廃止しろという意味ではない。
免許というのは国家試験に合格した人に業務独占を認め、無免許の人の業務を禁じる制度である。たとえば医師は診察や治療ができるが、無免許で治療を行うと違法行為として処罰の対象になる。