本企画は、セゾン情報システムズが提供するデータ活用による新たなビジネス創造へのヒントとなるデータ活用情報サイト「HULFT Square」との共同企画となります。「HULFT Square」と連動し、JBpressでは「HULFT Square Café」と題し、実際にデータ活用を実践されている企業の経営者インタビューを特集します。

「Data Centric Membership(データ セントリックメンバーシップ)」と掲げ、データ活用で躍進を続ける楽天グループ。副社長執行役員、そしてCIO(Chief Information Officer)& CISO(Chief Information Security Officer)として、その戦略を研ぎ澄ましてきた平井康文氏にデータが持つ力について聞いた。

楽天グループが目指す「Data Centric Membership」とは?

 ――70以上のサービスを展開し、国内で1億以上の会員数を抱える楽天グループ。海外も含めると15億人を超えるサービス利用者数がいる。非常に早い時期から、しっかりとデータ活用へ取り組んできたことで知られるが、現在、その世界観を「Data Centric Membership」として、さらに動きを加速させている。楽天グループがデータ活用戦略を進めてきた中で大きな変化の起点となったのは、2020年の携帯キャリアサービスの本格開始だ。そこからさらに進化した「Data Centric Membership」について聞いた。

平井 私たちの戦略の土台にあるのは、1つは「ブランド力」、2つ目に「データの活用」、3つ目は私たちが楽天IDと呼ぶ「メンバーシップのプラットフォーム」です。これらから「Data Centric Membership」という言葉が生まれたわけです。そして昨年の4月、携帯キャリアとして、本格的なモバイルサービス事業を開始し、潮目が大きく変わりました。
 

楽天グループ株式会社 副社長執行役員 CIO(Chief Information Officer)& CISO(Chief Information Security Officer) 平井 康文 氏

 楽天は創業以来、楽天IDと楽天ポイントいうメンバーシップのプラットフォームを持っています。

 さらに、「楽天銀行」や「楽天Edy」などのフィンテックのサービスも展開しています。フィンテックのサービスは好調で、既に楽天カードのショッピング取扱高は2020年度通期で11兆円を超えており、イシュアベースで国内ナンバー1のクレジットカード会社になっています。また、「楽天銀行」も1100万口座を突破しました。それから「楽天ペイ」やオフラインでも使える「楽天Edy」とさまざまな決済手段を取り揃えており、フィンテックのサービス全体が成長しています。

 そして皆様もご存じのとおり、インターネット・ショッピングモールの楽天市場や楽天トラベル、またRakuten TVなどのデジタルコンテンツサービスを展開しています。

 楽天では、楽天IDから得られる各サービスの利用データなどを組み合わせ、様々な楽天経済圏を一気通貫で繋ぎ、他に類を見ない、ユニークなデジタルコマース体験をお客さまにお届けしています。この楽天経済圏の核となる楽天ユーザーのメンバーデータの活用を「Data Centric Membership」と称しています。

 ――ネットワークのコネクティビティは、必須なレイヤーだが、いわゆる基礎になる土管にすぎない。その土管の上で何が提供できるかが重要なのだ。現に、日本のキャリア各社だけではなく、海外の主要な大手キャリアも、コンテンツサービスやメンバーシップサービスなどを展開して、コネクティビティのレイヤーから新たなレイヤーに進出してきている。楽天はその中で、他のキャリアのそれとは逆のアプローチをしている。ここは注目すべき1つの大きなポイントであると平井氏は語る。

 ビッグデータに関しては、ペタバイト級のデータを扱うが、問題はその中身にある。例えば、検索データは単に興味があって検索した結果であって、そこからどういう購買につながったかということは分からない。一方、楽天の場合は実際の購買データを持っている。その「データ(情報)」を「インテリジェンス(知見)」に変換して、そこから「インサイト(発見)」に変えて、初めて価値が生まれる。どんなデータであるかによって、そのスタート地点が大きく変わることになる。

平井 間違いなく、通信業界はその経済圏をどんどん拡大しようとしています。海外を見てもそうです。それによって行き着く先はどこか、何を実現したいのかというと、パーソナライゼーションです。今からもう30年近く前になりますが、インターネット黎明期には検索という機能が一番重要で、どれだけのヒット数が出るかと検索エンジンの性能を競った時代がありました。でもよく考えたら、検索キーワードを入れて何か表示されるというとき、何百、何千と表示されるのがいいのではなく、自分が本当に探しているものが1つ出てくるのが理想の姿ですよね。結局、それが「パーソナライゼーション」ということだと思います。本当に個々のお客さまに対して、「個客に寄り添うパーソナライゼーションを実現する」というのが、私たちが目指す「Data Centric Membership」の究極の姿です。