現金のリスク

 「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、実在する投資信託のデータをもとに、積立投資のパフォーマンスについて細かく見ていきます。

長期の投資がより良いパフォーマンスを示した事例

 積立投資のパフォーマンスが「期待通りで順調」という方もいらっしゃるかもしれませんし、「あれれ?」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。

 投資のリスクはご理解をいただいたうえで、「今なら積立投資のパフォーマンスを上げやすい」とお聞きになられて、投資をお始めになった方も多いと思います。
 と申し上げても、もともと投資というのは「未知の未来への投資」ですから、将来のことは誰にも約束はできません。でもそれが分かっていても、株価が下がる様子を目にしてしまうと、焦る時や不安になる時もあるでしょう。

 今回も実在する投資信託をもとにしたシミュレーションを見ながら、積立投資の話を進めていきたいと思います。

【表1】

①投資信託の名称 Aファンド
世界成長株
Bファンド
リート
Cファンド
公社債
Dファンド
日本株
Eファンド
バランス
②投資額の合計 430,000円 430,000円 430,000円 430,000円 430,000円
③基準価額の平均 15,247円 2,731円 10,820円 14,592円 14,409円
④取得口数の合計 290,730口 1,599,711口 397,432口 297,214口 298,710口
⑤損益分岐点 14,790円 2,688円 10,819円 14,468円 14,395円
⑥基準価額(3/31) 16,731円 1,905円 10,735円 13,450円 14,141円
⑦=⑥-⑤ 457円 ▲783円 ▲84円 ▲1,018円 ▲254円
⑧売却金額 486,420円 304,744円 426,643円 399,752円 422,405円
⑨売却益
⑧-②
56,420円 ▲125,256円 ▲3,357円 ▲30,248円 ▲7,595円
⑩投資の開始日 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30
⑪投資の終了日 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31

【表2】

①投資信託の名称 Dファンド
日本株
Cファンド
公社債
②投資額の合計 1,520,000円 1,520,000円
③基準価額の平均 9,871円 10,818円
④取得口数の合計 1,787,547口 1,409,499口
⑤損益分岐点 8,503円 10,784円
⑥基準価額(3/31) 13,450円 10,818円
⑦=⑥-⑤ 4,947円 34円
⑧売却金額 2,404,250円 1,524,796円
⑨売却益
⑧-②
884,250円 4,796円
⑩投資の開始日 2009.1.30 2009.1.30
⑪投資の終了日 2020.3.31 2020.3.31
「積立投資の目的」のおさらい

 積立投資の目的は「損益分岐点の引き下げ」です(損益分岐点とは会計の言葉なので、投資の世界にはあるいはふさわしくないかもしれませんが)。
 売却時の基準価格が損益分岐点よりも1円以上高ければ、プラスのパフォーマンスです。逆に1円以上低ければ、マイナスのパフォーマンスです。詳しくは5月18日公開の「第17回」をご笑覧ください。

表1と表2のシミュレーションについて

 表1および表2は、どちらも実在の投資信託をもとにした、積立投資のシミュレーションです。
 本稿の公開は7月6日ですが、表1および表2ともに、今年の3月末までの積立投資で3月末に損益を確定、つまり、それまで積立投資を行ってきたものを売却した場合を想定しています。
 今年の3月といえば、新型コロナウイルスの感染が世界で広がり、株価の下落が最も厳しかった時期でもありますから。

 ところで、表1は本稿のために新たに作成しましたが、表2は5月18日に掲載した「第17回」に載せた表をもとにしています。
 「第17回」よりも投資の終了日が1か月、早くなっています(第17回のシミュレーションでは、投資の終了日を2020年4月30日としています)。

 表1および表2は、ともに筆者が意図して作成したわけではありませんが、筆者の狙い通りの表になりました。どういうことなのでしょうか?