相性の合わない組み合わせ……本当にインフレ対策になるのか?
株式・債券の4資産分散が「大きな勝ちを得ることもなく、大負けをすることもない」ということは分かりました。しかし、問題は異なる資産を組み合わせるバランスファンドが、本来の目的である「インフレ対策」、つまり時間の経過とともに「築き上げてきた現金資産」を守ることができるのか否かという点です。
そこで、以下の表を作成してみました。
インフレ、預金、架空ファンドを20年間運用した場合の運用実績のシミュレーション
インフレ (2%) |
預金 (0.01%) |
架空ファンド | |||
---|---|---|---|---|---|
ファンドA | ファンドB | ファンドC | |||
2000年2月末(スタート) | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
2005年2月末(5年経過) | 1,104万円 | 1,000万円 | 1,080万円 | 990万円 | 1,180万円 |
2010年2月末(10年経過) | 1,219万円 | 1,001万円 | 1,080万円 | 980万円 | 1,190万円 |
2015年2月末(15年経過) | 1,346万円 | 1,002万円 | 1,870万円 | 1,570万円 | 2,210万円 |
2020年2月末(20年経過) | 1,486万円 | 1,002万円 | 2,110万円 | 1,760万円 | 2,500万円 |
※赤字は「インフレに対して負け」。赤太字は「インフレ負けに加えて元本割れ」
(ファンドA~Cの資産配分)
ファンドA | ファンドB | ファンドC | |
---|---|---|---|
日本株 | 25.0% | 37.5% | 12.5% |
先進国株 | 25.0% | 12.5% | 37.5% |
日本債券 | 25.0% | 37.5% | 12.5% |
先進国債券 | 25.0% | 12.5% | 37.5% |
ところで、そもそも投資とは「未知の未来への投資」なので、将来の運用成績をお示しすることはできません。過去の実績ならばお示しすることはできます。
ただし、今回は「架空ファンド」でのお示しになります。ファンドA・ファンドB・ファンドCはそれぞれ別々の「相性の悪い資産の組み合わせのファンド(投資信託)」をモデルとしたものですが、あくまで架空のファンドとして話を進めていきたいと思います。
さて、上の表の説明を続けます。
まず、インフレと預金については、左側の西暦は無視していただいて、()内の経過を時間軸としてご覧ください。
インフレは「品物の値段」の推移だと思ってください。
インフレ率2%の世界では、品物の値段は、その性能や数などは変わることなく、値段だけが毎年2%ずつ上昇していくのです。1,000万円でスタートした場合、20年後には、何と1,486万円です。
性能や数は変わることがないのに、値段だけが486万円もアップするのは、インパクトが大きいですね。
一方、預金も同じく1,000万円で始まっていますが、時間が経ってもほとんど増えませんね。インフレに完全に負けている、つまり額面は守られていても(元本割れはなくても)、預金の価値は時間の経過とともに下がり続けているのです。
一方、架空ファンドはいかがでしょうか?
インフレ、預金と同じく元本1,000万円で始めています。時間軸は()内の経過ではなく、西暦でご覧ください。「過去の実績」ですから。
ファンドA~Cは「相性の悪い組み合わせ」、つまり株式・債券という伝統的な資産にこだわりましたが、それぞれ組み合わせの割合が異なります。
いずれのファンドも「インフレに負けている」時期があり、ファンドBに至っては「インフレ負けに加えて元本割れ」の時期もあります。
が、いずれのファンドも15年を経過すると、インフレに対しても、元本に対しても、なかなかの「勝ち」を得ているのが分かります。
これなら、一部を取り崩しても、未だ「インフレ対策」の効き目がありそうですね。
まさに投資は「時間が味方」。投資でパフォーマンス(=好成績)を得るためには、やはり長期投資が効果絶大と言えそうですね。
「よし、これなら、投資をやってみよう!」という読者の皆さまの心の叫びが聞こえてきそうです。だとしたらありがたいお話ですが、投資を始めるには、やはり、準備というのか心づもりというのか……はい、必要なことがありますので、お近くのファイナンシャルプランナーにご相談を。
先述の通り、以下はあくまでも過去の実績を基に作成しております。
「築き上げてきた現金資産」を守ることができるのは、元本割れをしない預金か、一時的に元本割れもありうる「相性の悪い資産の組み合わせ」によるバランスファンドと、どちらが有効でしょうか? それぞれの傾向をつかんでいただくことはできましたでしょうか?
まとめに代えて
60歳代以上の方で、「老後資金は十分」という方のための資産運用は。その目的は「現金の価値」を減らさない、つまり「インフレ対策」、時間の経過とともに「築き上げてきた現金資産」を守ることができるのか、否かという点です。
預金と「相性の悪い資産の組み合わせ」によるバランスファンドと、どちらが目的にかなっているでしょうか?
もちろん、減ってしまう可能性もあるわけですから、お手持ちの現金の全てをファンドにつぎ込むなどということはないように。