そして4つ目が「生産性の可視化」です。我々自らが会計ソフトfreeeを使い、リアルタイムで収益性を可視化し、投資行動の改善や効率化につなげているほか、営業の生産性向上やより良い組織作りに役立てています。
本質的価値提供や組織作りなど、本当に重要なところは、今まで以上に時間とコストをかけて、独自性の高いものをつくっていくこと。それができないと、中小企業としての強みは生かせないし、人に関わる課題も乗り越えられません。ただ、これをやっていると収益性が下がるだけなので、人の力をツールによって最大化し、生産性向上に結び付けられることが重要です。
中堅・中小企業の変革にとって重要な4つのポイントを実現していくうえで、freeeのソフトが欠かせないツールとして活用いただけるよう、今後もがんばっていきたいと思います。
Part2:『成果を最大化するための財務戦略 ~IPO、その先へ~』(freee株式会社 取締役 CFO 東後 澄人氏)
財務戦略なくしてスタートアップの
非連続的な成長はあり得ない
freeeは2015年6月期から5年間で、売上の年平均成長率100%を超えるような成長を遂げてきました。これを支えているのが財務戦略です。成長をしっかりサポートする基盤になり得るような資金をしっかり調達してきて、必要な資金を投資して成長を加速させる――。それなくして、スタートアップの非連続的な成長はあり得ません。
freeeは創業以来、IPOを含めて計9回の資金調達を行いました。累計調達額は283億円に上ります。資金調達はアーリーステージ、レイターステージ、IPOという3つのフェーズに分けられ、それぞれのフェーズで何を考え、どのように資金を調達したのかは異なります。
まず、2012年12月から2014年9月までのアーリーステージについて。4回にわたり17億円を調達しました。このフェーズの大きな特徴は、海外のベンチャーキャピタルが投資家として参加していることです。その理由は、当時、日本の資本市場においてSaaSモデルへの理解が発展途上だったことが挙げられます。一方、米国では市場規模もプレーヤーの数も圧倒的で、理解を得られやすく、よりスムーズに資金調達ができると考えました。
アーリーステージでは、何よりもビジョンが重要です。プロダクトさえなく、1円も売上が立っていない、あるいは立っていたとしても初期ユーザーだけという状態で、投資家が評価するのはビジョンであり、どこを目指しているのかです。
もう1つ大事なことは、一歩先を見て必要な資金を調達することです。事業がどんどん伸びていくと、状況が変わり、必要な資金も変わってくるからです。資金調達の準備を始めてから、調達できるまでの間に必要な金額が変わっていたなんてことも度々です。一歩先を見て、少し多めの資金を調達するぐらいが適当です。
2015年8月から2018年8月までのレイターステージでは、4回にわたり144億円を調達しました。金額がぐっと大きくなったのは、この頃からビジネスが大きくなり、市場で評価されるようになり、ビジネスモデルも認知されるようになってきたからです。