麻生太郎首相がしゃべればしゃべるほど、自民党から票が逃げていく。郵政民営化見直しをめぐる発言で、麻生は前言の事実上修正に追い込まれた。苦しい釈明を繰り返し、それが新たな批判を招くという泥沼に。もはや政権崩壊寸前と言うべきだろう。麻生の窮地を見つめながら、元防衛相・小池百合子が次期総裁選にあえて言及し、「ポスト麻生」への意欲をにじませた。(敬称略)
「総理大臣の発言は、極めて重い。国民に誤解を与え、党内で無用な軋轢を生むような発言は慎まないといけない」。麻生側近の一人、自民党選対副委員長・菅義偉が2月11日、新潟市内の講演で首相を諌めた。要するに、「もうしゃべるな」と苦言を呈したのだ。
講演後、菅は記者団に「全国で地をはいつくばって選挙活動をしている同志の思いを代弁した」と説明。これまで麻生を擁護してきたが、さすがに一連の言い訳がましい発言は、聞くに堪えなかったのだろう。有権者がどんどん自民党から離れていく状況を止めるには、まず麻生の口を封じるしかない。
不支持7割突破、解散もできぬ首相
2月5日の衆院予算委員会で、麻生が郵政民営化に「賛成でなかった」と答弁し、「あ然」とした件は前回書いた。だが、週明け9日の衆院予算委で、麻生は要旨次のように答弁を修正した。「(2003年9月に総務相に)指名された時は民営化に反対だった。しかし、2年間にいろいろ勉強して、長期的に考えたら民営化の方がいいと最終的に思った。解散の時は、(4分社体制の)今の案はいかがかと(当時の小泉純一郎首相に)言ったが、民営化には賛成でサインした」
つまり、民営化反対はあくまで総務相就任時のことで、郵政解散時には賛成に転じていたと強調。民営化自体に反対ではなく、4分社体制に異論があったと強弁したのだ。
昨年9月の自民党総裁選。小池から民営化の姿勢を問われ、麻生は「わたしは郵政民営化を担当した大臣ですからね、忘れないでください」と豪語していた。ところが、2月5日の衆院予算委では「民営化担当は竹中(平蔵)さんだった」と答弁。これに関しては10日、記者団に「総務相の1期目は郵政民営化の担当大臣。後半の2期目(民営化法案を)決定する時には担当を外された」と釈明した。
民営化を争点とした2005年の郵政解散・総選挙について、麻生は記者団に「国民が感じていたのは民営化か、そうでないかだけだったと思う。内容を詳しく知っている方はほとんどいなかった」。4分社体制まで国民は知らなかったと強調したわけだ。
麻生の意識の根底には、「おれは決して民営化を見直せとは言ってない。4分社体制の見直し言及のどこが悪い」という開き直りがあるのだろう。また、「発言がぶれる」との批判を恐れるあまり、ぶれない姿勢を強調しようと苦しい弁解に終始。結局、国民や与野党の反発を買うという悪循環に陥っている。実際には最初の発言修正により、既にぶれてしまっているのに、麻生本人は周辺に「おれはぶれていない」と言い張っているというから、どうしようもない。