2011年3月18日、G7による緊急の電話会議が開催され、声明発表とともに協調介入が実施された。76円/ドルへと史上最高値まで急伸した円相場は、81円/ドル台まで押し戻されている。
G7の共同声明は「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済・金融の安定に悪影響を及ぼす」とし、「日本当局からの要請で、 米・英・カナダ・欧州中銀は為替市場で協調介入に参加する。為替市場をよく注視し適切に協力する」、また「必要とされるいかなる協力も提供する用意がある」とうたっている。
このG7による共同声明と協調介入の実現は、日本当局にとってすら意外性のあるものであった。
なぜ協調介入がG7共通の利益なのか
下の図1に見るように、過去G7の協調介入は5回あった。(1)1985年9月プラザ合意(ドル高修正)、(2)1987年2月のルーブル合意(過度のドル安是正)、(3)1995年8月の円高阻止、(4)1998年6月の円安是正、(5)2000年9月のユーロ安阻止、である。いずれも協調介入は為替の長期トレンドの転換点となっている。
今回も、介入がファンダメンタルズに合致していること(日本がさらなる金融緩和を迫られているのに対して、米国や欧州は金融緩和政策の出口が検討され始めている)、米国の利益に合致している可能性があること(デフレ対策が終わり、対外投資に政策重点がシフトする時期に入ること)、の2点から、長期円高トレンドの終着点となる可能性が強い。
G7声明が、日本に対する人道的支援にとどまらず、協調介入に至ったのは、円高阻止が「G7の共通の利益」と認識されたからである。それは「円高投機」が、始動しつつある世界景気回復を妨げるものだからである。
「円高投機」の背後にあるものは、「グローバルデフレシナリオ」であり、円買い・米株売りといったトレードを伴っている。円高はグローバルリスク回避シナリオ(リスクオフ・トレード)の象徴になっており、世界的なリスク資産の価格下落と表裏一体をなしている。それは量的緩和第2弾(QE2)でリスクテイクを鼓舞し、株価などの資産価格を押し上げようとしている米国中央銀行にとっても容認できない動きなのである。