世界中を飛び回ってビッグビジネスを手掛けてみたい。あるいは、まだ訪れたことのない土地に行ってみたい。こんな欲求を持っている人は少なくないと思います。
こうした欲求は、人類の歴史を深く知ると、「至極当然の欲求」であることが理解できます。
第1回の連載となる今回は、そんな話を取り上げたいと思います。
一時は「1万数千人」まで減少した現生人類
私たち人類はどう進化したのか?
この命題を巡り、2つの説が対立していました。1つは、「世界各地で人類は別々に進化した」という説で、もう1つは「アフリカで進化した人類が世界各地に広まった」という説です。
さまざまな研究の末、現在では、後者が定説になっています。つまり現生人類はただ1人の例外もなく、アフリカ大陸に起源を持つのです。われわれの祖先がアフリカ大陸から足を踏み出したこの出来事は「出アフリカ」と呼ばれています。
われわれホモ・サピエンスは今、コーカソイド、ネグロイド、モンゴロイド、オーストラロイドという4つの人種に分類されることもありますが、実は人種間の遺伝的相違はごくわずかしかありません。そのため、「人種」という概念すら否定する研究者さえいます。
今から7万~7万5000年前、スマトラ島にあったトバ火山が大噴火を起こし、大量の火山灰が地球上にばら撒かれました。インドやパキスタンでは、このときの火山灰が2メートルもの厚さで堆積している地層が発見されています。
このときに大気中に飛散した大量の火山灰の影響で、地球の気温は平均で5度下がったと言われています。「トバ・カタストロフ理論」と呼ばれる説です。
そのため、ホモ・サピエンスは一時、1万数千人程度にまで激減したと言われています。遺伝子の相違がほとんどないのはそのためだというのです。ただし、まだこれは仮説にとどまるというべきでしょう。
それよりもはるか昔、今から6500万年前に恐竜が絶滅したのは、隕石が地球に衝突し、急激に気温が下がったためだというのは現在の定説になっていますが、天変地異は、時として、生物の進化に大きな影響を及ぼすものです。トバ火山の噴火も、その一例です。