「私たちが生きているのは正解のない時代です」
株式会社アイ・エム・ジェイで執行役員をつとめる山本崇博氏は言う。同社はコンテンツ事業から始まり、今ではデータやテクノロジーを使ったデジタルマーケティング事業を幅広く手がけている。
「今でこそ、スマートフォンは私たちの生活の中に普及していて、私たちは日常的にモバイルアプリを使っている。でもそれは、10年前には当たり前のことではなかった。10年前はまだ、アプリではなくブラウザを通じてインターネットを使うのが主流の時代でした」

山本崇博
株式会社アイ・エム・ジェイ 執行役員。2005年株式会社アイ・エム・ジェイ入社。データ分析・最適化のコンサルティングを担うMarketing & Technology Labs(MTL)の立ち上げより、マーケティングコンサルタントとしてROI最大化支援に従事。07年企業派遣としてデジタルハリウッド大学大学院に通学し、デジタルコンテンツマネジメント(DCM)修士号を取得。その後、外資系広告代理店や事業会社を経て、12年より再びIMJに入社し、通信、放送、流通、教育、金融など多業種に渡るクライアントのデジタルマーケティングを支援している。

2005年に同社に入社した山本氏が、動画配信やサイト制作の仕事に携わる中で、企業派遣を通じてデジタルハリウッド大学大学院への入学を決めたのは、2007年。インターネット回線もまだ遅く、動画配信サービスも身近ではない時代に、「動画などのクリエイティブなコンテンツを、デジタルテクノロジーを使いながら、ビジネスの中でどう生かしていくかを、体系的に学びたい」と考えたのがきっかけだった。

デジタルハリウッド大学大学院は、ビジネス・クリエイティブ・ICTの3分野を融合した教育を提供し、デジタルコミュニケーションの創出を支える人材を育成する。修了すると取得できるのは、DCM(デジタルコンテンツマネジメント)修士という学位だ。
 

「自分たちの時代の事業育成のあり方」

山本氏も、同大学院在学中、動画配信や映画ビジネス、コンテンツの著作権を学ぶ授業やゼミを履修し、ビジネス、クリエイティブ、テクノロジーが融合したテーマについて学んだ。大学院で扱うテーマは、データやテクノロジーをビジネスに活用するアイ・エム・ジェイのミッションとはもともと親和性が高く、「もう10年が経つが、映画に関する授業やゼミは今でも覚えているし、今の自分の思考に生かされている経験も多い」という。

たとえば、「映画のストーリーやキャラクターの作り方」をテーマにした授業を通じて、人のとらえ方や起伏の作り方、興味の引き方など「マーケティングの世界にも応用できる考え方をたくさん学んだ」と振り返る山本氏。
「一見関係ないものでも、頭の中に入れておくことで、何かを発想しようとしたときに違うアプローチを考えることができる。同じものを同じ視点で勉強して蛸壺的な思考に陥らないように、違う場所に視点を置き、発想の仕方を変えるということは重要だ。先生は遠くに置くもの。企業に勤めながら大学院に通えたことの意味は大きい」と話す。

また、映画ビジネスのゼミでは、調達や映画配給など、映画事業に特有の事業計画の作り方を学びながら、「今の時代、練られた事業計画を待ってから事業を立ち上げるというより、スピーディーに事業を立ち上げて、走りながらチューニングしていくという方向性にビジネスのあり方が変わってきていると実感できた」という。そして「それが自分たちの時代の事業育成のあり方だ」と。
 

イノベーティブな発想を持った人材が挑戦するチャンスを作る

山本氏が大学院で学んでいたころから、10年が経つ。今やスマートフォンは生活のすみずみまで普及し、私たちは日常的にモバイルアプリを使う。動画配信サービスも身近なものになった。デジタルマーケティングの重要性を、今では誰も疑わない。

「大学院入学時には、クリエイティブを軸にどうビジネスに活用するかという問題意識を持っていたが、修了後はビジネスを軸に考えるようになった」という山本氏。大学院修了後は、ビジネスの中でどうやってイノベーションを起こしていくかという問題意識のもと広告やPRを扱う業界への転職を経て、アイ・エム・ジェイに復帰した。

2017年から執行役員としてデジタルマーケティングに携わる人材を育成する側に立った山本氏は、「クリエイターの質も変わっている。コンセプトの具現化が得意な人材や、様々なサービスを組み合わせて事業を作っていけるようなイノベーティブな発想を持った人材が必要とされている」と指摘する。

「少し前までは戦略を重視する時代だったが、今はアイデアや発想が先にあり、それを事業として磨き上げながらビジネスができていく時代。テクノロジーが発展したことでプロトタイプも作りやすくなった。何か製品を作ろうと思ったら、3Dプリンターを用いてすぐ試作品が作れるし、デザインを簡単にできるソフトも充実している」
そんなプロダクト・ファーストの時代、イノベーティブな発想を持った人材が社会の中でどんどん挑戦していくタイミングやチャンスを作ることが必要だと語る。

「この時代には正解はない。その中でもチャレンジをし続けることが大切」と山本氏。
「大学院にも資格にも、それ自体には何も答えがない。大学院に通うことはチャンスにはなるが、そのチャンスをどうやって形にしていくかは自分次第だ。悩んで正解を探してから行動するのではなく、まず行動しながら研ぎ澄ましていく。行動力が大事になってくると思います」と、10年前を振り返りながら締めくくった。
 

<取材後記>

「私は新卒のときはWebディレクターという肩書だったが、そんな仕事は子供のころにはなかった」と話す山本氏。今や企業のマーケティングに欠かせないデジタルマーケティングという分野も、時代をさかのぼれば存在すらしない。
「存在もしなかった仕事ができていく時代。新しい仕事を作っていく人材を育てたい」と話す。
「上の時代からある制度やサービスを、どうやって新しい形に変えていくか。働くことの再定義も含めて、私たちの世代が世の中に問いかけていくことが大事」
変革する現代の中で思考をアップデートしていくことそれ自体が、変革を形成しているのだと感じる。

 

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