人生の転機を迎えたとき、人生を見つめ直すとき、恋をした時の切ない気持ちを思い出してみてはどうだろうか。心を揺さぶる恋愛感情を表現したお薦めのクラシック音楽を2回に分けて紹介する。

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切ない恋愛感情に心を揺さぶられるクラシック音楽8選 上
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53050

プロコフィエフ 「ロメオとジュリエット」より「ジュリエットの墓の前のロメオ」

 前編の最後「シューベルトのセレナーデ」の項で、シェイクスピアの「ロメオとジュリエット」に触れたが、今回は窓の下での恋の語らいも空しく両人の交際がそれぞれの家に認められず、苦肉の策として死を装ったジュリエットの墓を見たロメオが嘆き悲しむシーンである。

 ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953年)の楽曲は、それまでドイツ近辺を中心に展開したクラシック音楽のロマンティックで流麗な旋律が織り成す世界とは異質で、メロディーの音の飛び方や和音構成が前衛的な趣を持つのが特徴だ。バレエ音楽として作曲された「ロメオとジュリエット」も、音が飛び跳ねるような部分を多々持ち、中にはハンマーでぶったたくような打撃音がただ十数発連続して発せられるといった箇所もある。何度聴いてもその意外性を楽しむことができる。

 その中で特に印象に残るのが「ジュリエットの墓の前のロメオ」(「ジュリエットの葬式」)である。絶望を表す響きの中に、ロメオの愛の叫びを聴くことができる。前衛的だが決して無機的ではない。プロコフィエフのそうした音楽性を存分に味わうことができる一曲である。

ショパン 「別れの曲」

 ポーランド出身のフレデリック・ショパン(1810~1849年)の「別れの曲」は、この世の中で最も美しい音楽の一つといってもいいのではないだろうか。ただし「別れの曲」というのは、ショパンがつけたタイトルではない。この曲を主題に戦前欧州で制作された映画の邦題がそのまま定着したのだそうだ。もともとの曲名は「12の練習曲」の第3番。この記号のような曲名のままでは、ここまで流布したかどうかは分からない。