ここまで書いてくれば分かっていただけると思う。土地開発公社はぼろ儲けをしている。
ほんの10年ほどの時間で、北京でも上海でも地下鉄が急速に普及した理由がここに隠されている。土地開発公社も、地下鉄の建設も、地方政府の管理下にある。土地開発公社が得た資金を、地下鉄の建設に回せば、さらなるお金が地方政府周辺に流れ込む仕組みになっている。まさに資金が拡大的に循環しているのである。
土地を開発しても需要が見当たらなくなっている
ただ、この仕組みには、多くの問題がある。
土地開発公社の幹部は、当然、地方政府が選んでいる。土地開発公社から土地の使用権を譲り受けるデベロッパーの選定も、地方政府が行っているのだろう。
土地開発公社やデベロッパーは、地方政府高官に有力なコネがない限り、駅周辺などの土地を入手することは難しい。土地使用権譲渡価格はどのようにして決まっているのだろう。このあたりも不透明である。
土地の価格は便利な場所で高くなる。それほど便利でない場所を土地開発公社に開発させて、比較的安い価格で身内や知り合いのデベロッパーに譲渡し、その後、新たな地下鉄の駅をその周辺に作ることも、地方政府高官なら可能であろう。
これらのことは想像の域を出ないが、日本の高度成長期の汚職やバブル経済を見てきた者ならば容易に想像がつく。
日本ではこのような汚職はマスコミが暴いてきた。田中角栄は土地に関連した利権で大きな富を得ていたが、それを明らかにしたのは、若き日の立花隆氏であった。文藝春秋に掲載された「田中角栄研究―その金脈と人脈」は立花氏の出世作になった。しかし現在、中国のマスコミにこのような機能はない。マスコミは共産党の管理下にある。
これまで述べてきた構造は、中国の経済成長に深く組み込まれている。中国経済は、このような土地にまつわる巨額の投資によって、高い成長率を維持している。
この構造が崩れることは、中国の崩壊を意味する。そのために、政府はこの構造を守ることに必死になっている。
しかし、この構造も空回りし始めている。地下鉄などを建設して土地を開発しても、それに見合う需要が見当たらなくなってきているのである。それは、郊外のマンションに空き部屋が目立つとの情報になって表れている。
「ねずみ講」的な成長が、長続きするはずはない。中国のバブル経済の破裂は近いと考えた方がよいだろ。
なお、中国の農地の現状や土地政策についてより詳しく知りたい方は、拙著『農民国家 中国の限界』(東洋経済新報社、2010)を参考にお読みいただきたい。