新興国の台頭という世界経済の大きな潮流を最も如実に体現した中国。2010年の英米メディアもこの「目覚めた獅子」に大きな関心を寄せた。

 ほんの数年前まで安価な労働力を提供する発展途上国とばかり考えられていた中国が、巨大な消費市場としての姿を現し始め、日本企業を含む海外M&A(企業の合併・買収)の主要プレーヤーにもなりつつある。

 それとは対照的に地盤沈下が進む日本だが、意外にも日本の再生に期待を示す海外論調が目立った。3回目となったWSJ日本版編集長の小野由美子さんとの対談では、このほかメキシコ湾の原油流出事故、欧州のソブリン危機など2010年の注目ニュースを振り返った。

中国に対し世界が厳しい目を向け始めた

川嶋諭JBpress編集長、小野由美子WSJ日本版編集長/前田せいめい撮影今回は2010年の注目ニュースをWSJ日本版編集長の小野由美子さんとともに振り返った
(撮影・前田せいめい、以下同)

小野 2010年を振り返って特に印象に残っているトピックは何ですか?

川嶋 今年は日本を取り巻く環境が激変した1年でしたね。いろいろある中で、一番はやはり中国の台頭でしょうか。尖閣問題もありましたし、日中関係が大きくクローズアップされました。

小野 本当にそうですね。結局、何をやっても中国の話になる。

川嶋 英国のエコノミスト誌とフィナンシャル・タイムズ紙(FT)に共通するのは、中国に対して厳しい記事が増えたことです。中国が自我を現した、いままで引っ込めていた爪を見せ始めた、と驚きをもって書いている。

 7月にクリントン国務長官がハノイの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の場で南シナ海における中国の動きを牽制する発言をして以降、特に緊張が高まりましたね(「緊張する米中関係:海洋摩擦」「横行闊歩し始めた中国を警戒せよ」)。

小野 アメリカが驚いたのは、レアアース(希土類)の輸出規制です。この分野で独占状態にある中国が新しい手を使って自分たちの強さを示してきたということで、国防省あたりが相当心配していたようです(「米国防筋、中国のレアアース独占への警戒強める」)。

 中国の経済のあり方というのも相当懸念が高まっていて、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)では「世界の反発を呼ぶ中国の『国家資本主義』」という記事がありました(【社説】中国のレアアース管理は先制攻撃

川嶋 その点については、FTの「技術的優位を得るために『近道』する中国」という記事も面白かったですよ。