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出演:柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)

 中長期的な働き方改革として、スキルアップによる陳腐化への対処をしていくにはどうしたらいいか。これまでであれば、社内にそれを担当する部署があったが、必要とされるスキルが新しいものへと大きく、そして速く変わっていくとなると、それを教えられる人が社内にいないという事態も出てくる。

 また国際競争が激しくなる現状では、そうした部分にコストを割けない事情もある。スキルアップの取り組みが社内でできないとなれば、能力開発や職業訓練が可能な教育機関を整備していく必要もあるだろう。その意味でも、企業ごとの対策を支える公的な支援が必要だ。

 現在ある技能訓練的な研修の場は、どちらかといえば単純作業を身に付ける場所であり、これからの時代に対応したものではない。むしろ、40歳程度の働き盛りが、さらに先の20~30年で必要とされる能力を身に付けられるような教育機関を、社会全体でつくっていく必要があるだろう。

 そうした議論も含めて、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が以前に提案したのが「40歳定年制」だった。これは、実際の制度化を目指すというより、中長期的な課題の提起という意味を込めて出された議論だった。

 この議論の一番のポイントは、スキルの陳腐化に対処するための教育機会を、国民全体に与えようとするところにあった。スキルアップせよ、と呼び掛けても、日々忙しく働く人々にはなかなか難しい。そこで、40歳前後で強制的に退職させ、研修やスキルアップの期間を1~2年与えるのが、40歳定年制の骨子だった。

 ただ、40歳前後でスキルアップを各自でやっていくにも、ローンや子育てを抱えていれば、それは非現実的である。しかし、そうした時期のスキルアップが国によって定められているのであれば、家族も納得しやすい。

 また昔と違い、今の60~70代はとても健康的で、元気に働ける期間も延びている。他方で世の中の変化は速く、スキルの陳腐化は生じる。とすれば、20~80歳までの人生を20年ほどで3つのスパンで区切り、それぞれの時期に違ったことをやってみれば、充実した生き方につながるのではないだろうか。柳川氏はこのことを「人生三毛作」と呼んでいる。

 重要なのは、社会の変化に対応するべく、各人もスキルを蓄積していく機会をきちんと持つということだ。これが、中長期的な働き方改革でも重要な位置を占めるだろう。


 この動画は知的教養メディア「テンミニッツテレビ・オピニオン」で収録した映像です。

 全編は10:02あり、この動画はその一部分です。
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 「40歳定年制」とは?『人生三毛作』で考える