マネジメント、マーケティング、ファイナンス、会計・税務、不動産の5領域で約170科目に及ぶ科目数を展開し、幅広いカリキュラムを誇る、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科(通称:MBS)。
新規事業の立ち上げや中堅企業の発展に携わるジェネラル・マネージャーを育成し、日本経済・社会のダイナミズムの高揚に資することを目指す。そのため、領域横断型履修プログラムの≪スタートアップビジネス≫と≪ファミリービジネス≫の2つのクラスター(科目群)を展開。実践的知識とアカデミックな専門研究の両側面にわたって体系的な学びを提供するビジネススクールだ。

髙橋伸佳
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科2015年入学、2017年修了。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程単位取得満期退学(健康科学領域)。株式会社コーセーを経て、株式会社ジェイティービー・ヘルスツーリズム研究所長。一般財団法人日本健康開発財団メディカル&ヘルスケア事業部担当部長のほか、大学講師や多数の公職を兼務。

株式会社ジェイティービーでヘルスケア関連の事業開発と立ち上げを担い、同社のヘルスツーリズム研究所長も務める髙橋伸佳氏は、MBSの修了生の一人。所属にツーリズムという名称はついているものの、既存の事業領域とは大きく異なる健康回復や健康増進を目的とした観光「ヘルスツーリズム」事業や国際医療交流(医療ツーリズム)事業、日本版CCRC(生涯活躍のまち)事業などを手掛ける。

応用健康科学の研究をベースに、一貫してヘルスケア業界のマーケティングの仕事に携わってきた髙橋氏。事業開発は経営そのものであると痛感し、経営学を体系的に身に付けたいという考え方が強くなった。一方、製造業からサービス業に転じたという背景もあり、製造業ではないサービスマーケティングの研究をしたいと考えるようになる。そこで、サービス研究の第一人者である戸谷圭子教授がMBSで教え始めたこともあり、同教授に師事することを決意し、《実践的な側面とアカデミックな側面のバランスが取れている》MBSへ入学を決めた。その他、以前に所属していた部署で、同僚の多くがMBA(経営学修士)を持っており、共通言語である経営学に挑戦したいという思いや、場所的に通いやすく、仕事と通学の両立がしやすかったことが、入学への道を後押しした。
 

研究を通じた本質をとらえる訓練

 在学中、髙橋氏は戸谷教授のゼミに所属し、サービスマーケティングの研究に深く取り組んだ。妥協を許さない戸谷教授のゼミには緊張感があり、「原著にあたって研究を進める中で、言葉の解釈、フレームワークを丁寧に学び、本質をとらえる訓練ができた」という。

ゼミでまとめた論文は学会発表をするまでに至り、同級生とは共同研究にも取り組んだ。こうして研究を進めることで、髙橋氏がキャリアを通じて携わってきた「ヘルスケア×マーケティング」の分野に確固としたベースができたのかもしれない。
また、髙橋氏はマーケティングの授業で、チームでケーススタディを書いた経験も振り返る。MBSではケーススタディの授業が多いが、この授業は研究や教育の対象となるケース自体を、実際の会社や事例をもとにしながら研究教材として作りあげるというものだ。

上場企業の役員に取材をし、財務諸表の裏を取るなどして作り込んだケーススタディは、最終的に企業やビジネスを学ぶ学生へ販売するところまでこぎ着けた。「事例を学ぶだけではなく取材を通じて自分たちで作るというところまで行ったことは、貴重な経験だった」という。
 

実践との交わり

 科目数が多いMBSならではの発見もあった。たまたま取った企業法務の授業が非常に面白かったと話す髙橋氏。「授業で活用されているケース自体が先生のオリジナル。推理小説のような世界に毎回引き込まれていくうちに、法務知識が身に付いていった。特に、個人情報関連の知識を学べたことは、機微情報を多く扱うヘルスケアの業務にすぐに役に立った。今日学んだことを明日使おうという気持ちでMBSに通っていたが、この科目で学んだことは本当に次の日の業務に役に立った」

MBSは、アジア等の現地企業や大学を訪問する海外研修科目も開設している。中国の研修を経て、グローバルな視点を培ったという髙橋氏。「中国の大学でのMBAの授業も受けた。現地の授業は高度で叩きのめされた感覚だったが、中国ならではの発想やハングリー精神に衝撃を受けた」。またその際に現地企業の見学にも行き、事業モデルを見せてもらったという。実際にビジネスで関わるとなると、裏から事業モデルを知ることはできないが、学生として見られたことはかなりの収穫だったという。

現在の事業でも中国に部署を持ち、国際色豊かなチームと働く髙橋氏。「日本に医療ツーリズムでやってくる外国人患者の9割は中国人。現在、受け入れに関する基準づくりなどに取り組む中で、現地企業と交渉をすることも多い。学生時代の国際経験も役に立っている」と語る。

 

キャリアのアップグレード

 近年は、国内各地でヘルスケアを基軸としたエリアマネジメント事業にも取り組んでいる髙橋氏。病院だけでなく地域でヘルスケアを担う地域包括ケアシステム、交通機関を使いやすくすることによって医療と生活を近接させるサービスなど、ヘルスケアをベースにしながらも、地域に合わせたコミュニティデザインの計画作りに邁進している。「これからは、経営の知識を活かし、地域経営の分野での事業をさらに進めていきたい」と話す。ヘルスケア業界の技術も分かる経営者として、ゆくゆくは社内ベンチャーを立ち上げたいと考えている。

「世界は2面で広がった」と髙橋氏は言う。
一つは研究を通じた学問の側面。もう一つはMBSで他分野の同級生と深く交流したことで広がった実践領域の面だ。「ヘルスケア×マーケティング」の分野で歩んできたキャリアを研究を通じてアップグレードし、「ヘルスケア×マーケティング×地域経営」の分野まで広げた髙橋氏。
「一歩踏み出して良かった」と振り返る。
 

<取材後記>

 「社会人になると、会社で叱られることもなくなってくる。大学院で学ぶ時間は、分からないと素直に言えて、叱られて、恥をかくことができる時間。自分のダメなところも指摘されて丸裸になることができる場所。しかも、同じ志を持つ仲間がいたこともあり、その時間が楽しみでならなかった」と話す髙橋氏。
ハードであっても自分の人生に必要な、豊かで充実した時間だったのだろうと、その言葉に納得した。


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