これら先物取引の中には、実際に生産・消費する原油の将来価格の変動リスクをヘッジする目的のものもありますが、多くは金融投資目的と考えられます。

 その背景の1つには、株式市場から逃避したお金が原油先物市場に流れたとされています。

 米国では、1990年代後半から多くのインターネット関連企業の株式が上場したナスダック市場(NASDAQ)では、1996年に1000前後で推移していたナスダック総合指数が、2000年3月には最高値の5048にまで上昇しました。いわゆるドットコム・バブルです。

 しかし、その後の金融引き締め政策によってバブルは崩壊し、2002年にはナスダック総合指数は1000台に下落しました。

 株式市場のバブル崩壊後、行き場を失ったお金が、徐々に原油を含むコモディティー(商品)市場に向かったとされています。国境、市場、商品を超えて、お金がお金を求める世界、つまり、金融市場主義の台頭です。

 サブプライム問題を教訓に、各国政府が、金融市場主義の行き過ぎた部分を規制しようと試みていますが、基本的なグローバルな資本の流れは、今後も止まることはなく、引き続き原油などのエネルギー商品市場も投機の対象となるでしょう。

日本のエネルギー構造改革の必要性

 以上、原油需要構造変化と金融市場主義の台頭といった社会構造の変化によって引き起こされた21世紀型の原油価格の高騰は、突発的な地政学上の理由によって発生した1970年代のオイルショックとは根本的に異なります。

 昨今の原油高は構造的な原油高なので、残念ながら紛争の終焉とともに原油高が緩和するようには、簡単にそのトレンドは変化しません。

 つまり、今までの日本のエネルギー安全保障の脆弱性は、いわば中東に問題があれば露呈する「突発的な」問題であったのが、2000年代以降は、「構造的な」問題として置き換わってしまいました。

 構造的な問題には、その場しのぎではない、構造的な解決策で臨まなければなりません。