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なぜグローバリゼーションの勝ち組であるアメリカやイギリスでアンチ・グローバリゼーションが強まっているのか。それに対してクリアな答えを示しているのが、エマニュエル・トッド氏だ。そう語るシティグループ証券 チーフFXストラテジスト・高島修氏。ではトッド氏の答えはどのようなものなのか。

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アメリカやイギリスはグローバリゼーションの勝ち組ではなかったのかということです。なぜそれらの国でアンチ・グローバリゼーションが強まっているのでしょうか。実際、私は米系金融機関で勤めていますので、アングロサクソン系の優位性を強く感じます。なぜこれほどうまくやってきた人たちが、国としてグローバリゼーションに反する選択をしているのか、疑問に思うのは当然だと思います。

これに対してクリアな答えを示しているのが、フランス人の人類学者、エマニュエル・トッド氏です。最近、この人の本がいろいろと売れていますので、ご存じの方もいるかと思います。彼がよく使うキーワードが「グローバリゼーション・ファティーグ」で、グローバリゼーションに対する疲弊、疲れのことです。平たくいえばアンチ・グローバリゼーションのことで、これ自体は珍しい概念ではありません。

エマニュエル・トッド氏の指摘で面白いのは次の2点です。英米はグローバリゼーションに成功しすぎたため、貧富の格差が拡大した。だから、国内でグローバリゼーションから取り残された一般の人たちが、グローバリゼーションに対する反感を他の国よりも強めた。つまり、グローバリゼーション・ファティーグは、アングロサクソン系のアメリカ・イギリスだからこそ出ているのだと主張している点です。

彼の主張によると、アングロサクソン系の社会は絶対核家族型だと言います。日本やドイツは子どもが比較的大きくなるまで家で育てるのですが、アングロサクソン系の家庭は比較的小さい頃から子どもを独立させて、個人主義を植え付けさせていきます。ですから、親が持っていた美徳や概念を子どもが引き継ぎにくい環境にあります。ですから、アングロサクソン系の社会では、数十年に一度、非連続的な大きな変化が発生しやすいのです。

その一つが1980年代のサッチャー革命、レーガン革命(あるいはレーガノミクス)であり、これらによって両国は個人主義と新自由主義を徹底していきました。また、アメリカとイギリスはもともと覇権国家としての側面もあったために、グローバリゼーションに成功していったのです。その成功が大きくなりすぎたがゆえに貧富の格差が拡大し、グローバリゼーション疲れが起きていると、彼は主張しているのです。

こうした主張が正しければ、トランプ革命やブレクジットはサッチャー革命やレーガノミクスによって加速した英米主導の個人主義・新自由主義の流れを大きく変えていく転換点になっているのかもしれません。

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トランプ時代の米ドル相場~グローバリゼーション疲れ
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