2010年9月14日、民主党代表選で菅直人首相が小沢一郎前幹事長を破り、再選を果たした。両者は党を二分して激しく闘い、首相になる「資質」に乏しい人が「資格」のない人を下す結果となった。
すなわち、「政治とカネ」の問題を抱えて検察審査会の議決を待つ小沢氏が相手だったからこそ、菅氏が党代表に選ばれたにすぎない。
両者が獲得したポイントは菅氏の721に対し、小沢氏が491にとどまり、大差が付いた。党員・サポーター(300ポイント)から菅氏が8割超を獲得し、小沢氏の「資格」に対する世論の不信感が改めて浮き彫りになった。
しかし国会議員だけで見ると、菅氏412、小沢氏400とほぼ互角である。腰だめの「消費税10%」を掲げて参院選に突っ込み、惨敗を喫した菅氏の首相としての「資質」が信認を受けたと見るのは早計だろう。
当選後、菅氏は壇上から「ノーサイド」を宣言したが、死闘を繰り広げた後の挙党体制構築は容易でない。幹事長や重要閣僚のポストをめぐり調整が難航すれば、党内抗争が「延長戦」に突入する恐れもある。
「政治空白」の間、円高・株安に史上初のペイオフ発動
民主党が代表選という名の党内抗争に明け暮れ、「政治空白」が生じていても、経済はお構いなしに揺れ動く。円相場は15年ぶりの83円台に突入し、日経平均株価は一時9000円を割り込んだ。炎天下で長い代表選を見つめながら、呆れ果てた国民も少なくないはずだ。
日本振興銀行が経営破綻し、政府は史上初のペイオフ発動を余儀なくされた。1000万円を超える預金は保護されず、その総額は110億円(預金者3423人)。高い金利に目がくらんだとはいえ、過去の銀行破綻では国が預金を全額保護してきたのだから、被害者は「なぜ今回だけは違うのか」と諦めきれない思いだろう。