中国衛生部は6月11日、新型インフルエンザの流行は落ち着いてきた半面、手足口病が最も流行する時期に突入したとして、国民に注意を呼びかけている。
発表から10日間で感染者が2倍に
発表内容は、「今年は手足口病が流行しており、5月前半の時点で、中国全土で前年同期比で4割以上となる42万7278人が感染、そのうち5454人が重症となり、260人が死亡した」というもの。
中国衛生部の注意喚起は現実のものとなり、発表から10日ほどの6月22日の時点で、中国全土で感染者は98万7779人、重症患者は1万5501人、死亡者数は562人にまで膨れ上がった。手足口病とは、発疹が文字通り手と足と口に出る病気であり、主に幼児を中心に感染する。
2002年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の痛い経験から、中国衛生部は「早期発見」「早期報告」「早期診断」「早期治療」の4原則を掲げ、それら原則を実現すべく、「患者の集中」「専門家の集中」「資源の集中」「医療の集中」を実行してきた。
主に幼児が感染する手足口病については、「死亡率を下げるべく、特に重症の幼児患者を実力ある総合病院で集中治療を行う(衛生部発表)」という。
果たして、伝染病対策の現場はどうなのか。筆者は上海市と内陸省の雲南省昆明市の医療現場を巡ってみた。
昆明市には指定病院が1つだけ
昆明市の広さは2万1473平方キロメートルで、国で言うとイスラエルより若干大きい。
その中で地域の中心となる市街地があり、その周りに山を隔てて小さな町が点々と存在する。それらすべてをひっくるめて昆明市と呼んでいる。
昆明市の市街地には児童病院はいくつかあるが、中国人に話を聞く限り、昆明市全体で手足口病の指定病院となっているのは公立の昆明市児童医院がただ1施設あるだけらしい。
児童医院に入ると建物の入口の前に「手足口病はここではなく、右の建物へ」と書かれた立て札があった。
なるほど、風邪や怪我などの外来患者に感染しないようにするために、別の建物で診断するわけだ。
向かった先の手足口病専門の隔離病棟は、患者らしき小さな子供を連れた人々で埋め尽くされ、テレビや映画で観た第2次世界大戦下の野戦病院のような状態だった。