毎朝テレビの天気予報では、江ノ島と湘南海岸の様子がよく映し出される。海面に半身を出したマッコウクジラのようにも見える島とその周辺のビーチは、首都圏の海沿いの観光地としても知名度が高いので、便利に使われるのだろう。

 いまは、海水浴客などでにぎわうこの観光スポットは、神奈川県の藤沢市に含まれる。両隣の鎌倉、茅ヶ崎の2市などと併せてこのあたりの太平洋岸一帯の海岸は湘南海岸と呼ばれるが、そのほぼ中央にシンボル的に浮かんでいるのが江ノ島である。

江ノ島(藤沢)とマイアミビーチ

江ノ島(茅ヶ崎方面から)

 かつて地元の観光協会では、一帯を“東洋のマイアミ”として広く宣伝しようとしたことがある。

 米フロリダ州にあり、避寒リゾートとして世界的にも有名な地名にあやかって同じ海沿いの観光地である地元を売り出そうとしたのだった。

 それがきっかけで、1959年には、藤沢市はマイアミビーチ市と姉妹都市提携を結ぶことになった。

 最初はマイアミ市に姉妹都市提携を申し入れたのだが、同市はすでに別の都市と姉妹都市提携しており断られた。しかしこれを聞いたマイアミ市の東隣に位置するマイアミビーチ市から、逆に藤沢に申し入れがあり提携が実現したという。

マイアミビーチ

 「当時はマイアミは知っていてもマイアミビーチ市の存在は知らなくて、マイアミと提携したと思っていた人もいたようです」

 と、現在民間レベルで交流を図る湘南マイアミビーチ市親善協会の角田義晃事務局長は話す。

 しかしそれも無理はないことで、大西洋岸のフロリダ半島南部の地理など日本人には馴染みはなく、マイアミの名前だけは南国のイメージがあったものの、マイアミビーチとの区別はなくて当然だった。

 上の地図を見ていただければ分かるように、マイアミ市とビスケーン湾を挟んで南北に細長く延びている砂洲のような島がマイアミビーチ市だ。