結論を言えば、このままでは共産党の独裁政治は持続不可能である。共産党指導部は政治改革を拒んでいるが、改革を行わなければいずれ革命が起きることになるだろう。中国政府と中国共産党が直面しているのは、「改革か、革命か」の二者択一の選択である。
このままでは持続が望めない中国社会
かつて国民の大半は「平等」という毛沢東のユートビアを信じて共産党を支持した。だが、毛沢東が描いたユートピアは完全に崩れてしまった。
わずか34年間の「改革開放」政策でGDPは世界2位にまで成長したが、共産党は建国当時の理念をほとんど実現せず、単なる国民の監視を受け入れない独裁政権を続けているだけである。
当たり前の結果だが、ごく少数の特権階級が富の大半を支配している。このような社会が持続不可能であることは指導者自身もよく知っているはずである。それゆえ、共産党幹部の多くはその子供を欧米諸国へ留学させ、さらに移住する者も少なくない。
中国のインターネットで「裸官」(裸の幹部)という言葉が流行っている。すなわち、共産党幹部は妻と子供を海外へ移住させ、たった1人で国内に残り稼ぐ。ただし稼ぐといっても、収賄など違法な収入で稼ぐということである。いざ危なくなると、視察などの名目で海外へ逃亡する。1人なら逃亡しやすいから、裸官として国内に残るのだ。
ある推計によれば、中国から海外へ毎年数百億ドルの外貨がフライト(逃避)していると言われている。そのほとんどはこうした裸官らによる親族への送金と見られる。
いかなる社会でも同じだが、経済発展と社会の安定を持続するには、中間所得層の台頭が必要である。現在の中国社会では、少なくとも60%の低所得層は経済発展のメリットを享受していない。一方、約5%の富裕層が国全体の70%以上の富を支配している。
中国社会の安定と繁栄を持続するためには、まず特権階級の特権を打破し、富の分配を徐々に平準化していかなければならない。最低でも、国民の30~40%が中間所得層になる社会環境を醸成していく必要がある。
北京の中南海は、指導者らの執務室や住居が集まる場所だが、その正門の新華門に「為人民服務」(人民のために奉仕する)という共産党のスローガンが書かれている。しかし、今の中国社会と政治の現状を見ると、人民が共産党のために奉仕させられていると言わざるを得ない。これでは「共産党が人民の政党」というのは誰が見ても嘘に聞こえる。
習近平政権はこのような崖っぷちに立って、国を救うか、共産党を救うか、という究極の選択を迫られている。