「民主主義における市民の役割は、投票したらおしまいということではありません(The role of citizen in our democracy does not end with your vote.)」

 これは、11月に行われたオバマ大統領再選の勝利演説の一節です。

 スピーチは次のように続きます。「国が私たちに何をしてくれるかではないのです。私たちが力を合わせて何ができるかなのです。困難でなかなか報われない、しかし私たちに欠くことのできない“自治”を通して。これこそ私たちが依って立つ原則なのです」

総選挙は終わった。でも私たちの政治参加は始まったばかり

 日本でも総選挙が終わり、新たな政権ができます。そう、私たちの仕事はここで終わりではないのです。ここから始まります。

衆院選投票始まる

政治や社会に対する市民の役割は選挙だけではない〔AFPBB News

 といっても何ができるのか、わたしも以前は絶望的な無力感を感じていました。自分が賛同した党であっても、全ての政策に自分の思いを反映してくれているわけではないし、どうせ政治には私の声など小さくて届かないと。

 でも、私は声を届ける方法を知らなかっただけなのだと、ボランティア活動や留学を通じて自分の世界が広がり、人との繋がりが増えるにつれ気づいたのです。

 まず政治について話すことが大事です。「話すだけ?」と思うかもしれませんが、これは民主主義において一番市民に求められている役割なのです。他の国と比較して日本に決定的に欠けているところが「市民が政治について話すこと」だと思います。

 まず、政治について人と話すことで政策に対する自分の意見がまとまり、意見を交わすことで理解が深まり、意見が充実していきます。

 あなたと話した人は、その場では大して反応しないかもしれませんが、次第に政治に興味を持ち始め、また違う人とも話したいと思う。その連鎖で興味を持つ人が増えていきます。

 また、自分と異なる意見を持つ人に出会うこともあると思います。でも、よく背景や理由を聞いてみると、実は同じ心配をしていたり、同じ方を向いていると分かることも多いと思います。そして意見の違いは、その人のたった一部の側面でしかありません。

 私の家族は一家団欒の時に政治の話はほとんどしない家でした。でも私が数年前から政治の話を始めると、最初は意見を交わすのもぎこちなかったのですが、次第にそれが普通になってきました。母は冗談めかして「会話が変わっちゃったよ」と言います。

 ドイツ人の友人に聞くと、友達を招いた食事会の場や家族で集まった時に、雑談の中で政治の話をするそうです。「なぜ?」と聞いたら、「政治は自分たちのことだから」と、ごく自然に返答が返ってきました。

 話すことの積み重ねで政治に関心を持ち続けると、政府がよからぬ方向に行くのを察知し、よい世論を作ることもできると思います。

 そして様々な情報を得ることが政治について話すうえで大切だと思います。マスコミの報道は広く浅く伝えるためにエッセンスが凝縮されてはいますが、自分たちが本当に知りたいところまでは情報を得られません。