ロック、ポップス史上に燦然たる栄誉を刻む伝説のバンド、ビートルズ。彼らの最初のシングル「ラブ・ミー・ドゥ(Love Me Do)」が発表されて、この10月で50年が経った。

 「レット・イット・ビー」「イエスタデイ」「シー・ラヴズ・ユー」「オール・マイ・ラヴィング」「ミッシェル」・・・。振り返れば名曲の数々がすぐに思い出される。

 ビートルズ・ファンは、当時の若者から今の10代まで、いまや3世代を超え4世代に広がろうとしている。

 また、彼らの音楽と活動は、社会的、経済的にも大きな影響を及ぼし、その全体像を研究しようと、彼らの出身地であるイギリスのリバプールにあるホープ大学では近年「ビートルズ学」の修士課程まで生まれた。

 もちろんその魅力の中心は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーのコンビによる、多様な美しさを持つメロディーと、それを膨らませるジョージ・ハリソン、リンゴ・スターを交えた4人のバンドサウンドである。

 大ヒット曲を飛ばすアーティスト(バンド)はいくらでもいるが、あれほど多様なヒット曲の数々を送り出せるメロディーメイカーは希有だ。

数あるカバー集とはひと味ちがう不思議な企画

現在のところ、3作まで作られたビートルズ・カバー集

 彼らの名曲は、これまでジャンルを超えて多くのアーティストによって歌われ、またインストゥルメンタルとして、演奏されてきた。

 古くはセルジオ・メンデスによる「フール・オン・ザ・ヒル」のカバーや、近年では、スウェーデンのピアニスト、スティーヴ・ドブロゴスによるビートルズ・アルバム「ゴールデン・スランバー」のカバー曲などが思い出される。

 こうしたカバーは、オリジナルの魅力の上に、カバーするアーティストの個性を展開する、原曲のアレンジが多いが、これらとはひと味ちがったカバー作品集が登場している。ギタリスト告井延隆による、アコースティックギター1本でのビートルズ曲集だ。

 といえば、その手のものはいままでいろいろある、と言われるだろうが、ユニークなのは、バンドサウンドとしてのビートルズをギターソロでできるだけオリジナルに忠実に再現した点である。

 ビートルズが現役時代に鳴らしていたいあの、ギターとコーラスによるトータルなサウンドの味というか雰囲気を、ギター1本で奏でようという試行錯誤の結果を集大成した“不思議な企画”でもある。

 くどいようだが、ビートルズの曲をそのメロディーラインを追いながら独自のアレンジで、自分なりの作品にまとめるのではない。あくまでオリジナルのバンド演奏を手本とした制約のなかでのカバーである。