鳩山由紀夫総理が再度沖縄を訪問した。米海兵隊普天間飛行場の移設問題は、政権交代後の迷走の末、結局、振り出しに戻った。いや、事態は8カ月前よりずっと深刻になったと言ってよい。

普天間問題は中国の有識者の間でも関心高い

米中対話開幕、哨戒艦問題で対応協議

第2回米中戦略・経済対話のために北京国際空港に到着したヒラリー・クリントン米国務長官(右)と米国のジョン・ハンツマン駐中国大使(2010年5月23日)〔AFPBB News

 この間、筆者は中国の政治家、軍人、官僚、学者、ビジネスマン、大学生から「鳩山総理は本当に5月末に決着をつけられるのか?」という質問を無数に受けた。彼らの日本に対する関心は極めて高いのである。

 実際、対日関係の安定は中国外交にとって死活的な問題だ。歴史や領土などの問題で、国民感情が突発的に暴走し、両国関係が揺らぐことは極力避けたい、というのが首脳部の本心である。

 先の金正日総書記訪中に代表される外交では、「北朝鮮を甘やかすな。個人プレーは避けろ」などの批判が周辺国輿論から見られた。天安号沈没事件が北朝鮮の軍事的挑発であったという結論が出されたことで、中国の立場は厳しくなっているからなおさらだ。

 5月24、25日、北京で第2回米中戦略・経済対話が挙行された。人民元切り上げなど政治的に敏感なイシューは温和に処理した。

 共産党関係者によると、米国側は人民元切り上げに圧力をかけない、中国側は対イラン追加制裁に協調姿勢を示す、を「交換条件」に、今年4月13日、胡錦濤国家主席の訪米および核安全保障サミット出席が決まったのだという。5月24、25日の経済対話もその路線の延長だったと言える。

米中は独自のリズムで政治・外交関係をマネージする時代に突入

 ダライ・ラマ訪米、米国の台湾への武器売却、グーグルの中国市場撤退などで一時は信頼関係の危機に陥った米中関係も「調整期」に入ったと見ていいだろう。

 蜜月→摩擦→調整、世界の両大国が外部の条件・環境に左右されず、独自のリズムで政治・外交関係をマネージする時代に突入した。筆者は北京で生活しながら、そう感じている。

 冷戦時代における「日米同盟VS中国」という単純構造はもはや成立しなくなった。少なくともそれを前提にしないと、米中日3国関係の実情を見誤ってしまう。

 日米同盟が台頭する中国への抑止力になっていることは事実だ。朝鮮半島や東南アジアなど、中国と国境を接している諸国からすれば、日米同盟の存在は安心材料になる。東アジアのパワーバランスが保たれることは地域の安定と繁栄に資する、同盟は公共財、という解釈は正しい。