中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の李肇星報道官は3月4日、北京の人民大会堂で記者会見し、2012年の中国の国防予算が前年実績比11.2%増の6702億7400万元(約8兆7000億円)になると明らかにした。
2ケタの伸びを続ける中国の軍事予算
他方、日本の2012年度予算案での防衛関係費は前年度比1.3%減の4兆7138億円で、公表分だけでも日本の1.85倍に上る(今年3月4日付『読売新聞』)。
中国の軍事費の実際の額は国際標準の集計では、公表額の倍から3倍になることから、実際の額は17兆4000億円以上となり、この10年間で約4倍になっている。
このような中国の軍事力増強に対し、今年2月5日、米国のバラク・オバマ大統領は「アジアでのプレゼンス(存在)を強化し、この極めて重要な地域の予算は削減しない」と明言。パネッタ国防長官も「アジア太平洋の米軍の前方展開能力と抑止力を強化する」と述べている。
しかし、米国防総省は今後10年間で約4900億ドル(約37兆円)の軍事費削減を迫られており、同省は地上戦力の主力の陸軍を現在の57万人から49万人に削減する方針である(今年2月14日付『時事ドットコム』)。
国防費のバランスは、そのまま軍事力のバランスに反映される。中でも憂慮されるのが核戦力のバランスである。
米国の国際政治学者ミアシャイマーは、今日の核時代では、核を持たない国は大国とは言えないと明言している。それが国際社会の現実である。今日の国際社会で独立と主権を真の意味で守るためには、核抑止力は不可欠である。
日本はこれまで一貫して、核抑止力を米国の核の傘に依存してきた。しかしその信頼性は今後も維持されるのか。もし確保されないとすれば、日本はいかにすべきかが今問われている。
意義を失っていない核抑止力
核抑止力について冷戦後、意義を失ったとする見方も出ているが、核兵器には他の兵器にはないいくつかの特長がある。
小型であるにもかかわらず破壊力が極めて大きい。そのために隠匿も運搬、投射も容易である。特に戦略弾道ミサイルと一体になれば、世界のどこでもいつでも攻撃し、相手国の人口や産業力、軍事力を破壊することができる。
ミサイル防衛システムは万全ではない。重力に従って音速の20倍程度で再突入してくる大陸間弾道ミサイルICBMを迎撃できるようになるにはあと10年程度はかかる。
しかしその頃には、ロシアや中国の弾道ミサイルの弾頭は、大気圏再突入後、軌道を変更できる機動型の弾頭に切り替わっていると予想され、ミサイル防衛システムでは迎撃できなくなる。