本来のトヨタ生産方式を説くために始めた「本流トヨタ方式」は今、「ジャストインタイム」と並ぶ2本柱の1つである「自働化」の話を進めていて、今回はその10回目になります。

 9回目までは、「自働化」の概念の中の「機械に自律制御の機能を与える」(=「機械に知恵を付ける」)ことによって「人の仕事と機械の仕事の分離」の改善が進められ、機械工場では労働生産性を約10倍あまりも向上させたお話をしました。

 この改善は組立工場のコンベア作業にも展開され、「組立作業は人が主役、機械は助手」という「Collaboration(協労)」の概念になり、1970年代に急膨張する乗用車の組立ラインに導入され、当時は「乍ら(ながら)作業」と呼ばれたとお話ししました。

 今回から、「自働化」とは「どのような異常時にも品質を絶対確保する」理念であることを説明していきます。

「品質」とは製品の性能だけを意味するのではない

 まず「品質」という言葉が様々な意味を持っていることを、皆さんとともに再認識したいと思います。

 「上品な人」「下品な仕草」という言い方もあるように、そもそも「品」という言葉は品物を意味するのではなく、「人物」「身分」「生活水準」といった抽象的なものを指しています。

 産業界ではよく「品質第一」と唱えられ、最近は「途上国の製品は値段は安いが品質が心配だ」などと言われることも多く、もっぱら「製品の性能」という意味で使われています。

 その結果、「TQC」(Total Quality Control)と「TQM」(Total Quality Management)の中の「Q」(Quality:品質)は大きく誤解されていると筆者は思っています。

 本来、「TQC」のQは「製品の品質」を指し、「TQM」のQは製品ではなく、それを作り出す「経営品質」「従業員の人物、仕事ぶり」を指して言っているのです。その違いが理解できず、ただ単に名称が変わっただけと思っている経営者が多いのに驚かされます。

 「経営者が経営者としての仕事をしているか否かを問う」のがまさに「TQMの本質」なのです。本人がそれを理解していないというのは、全く皮肉なことです。