プーチン首相の「タフガイ」演出、もう古くさい?大統領選前にかすむ効力

F1用のレーシングカーに乗るプーチン首相〔AFPBB News〕

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 それだけでなく、今度は体制派の若者グループの動員を対抗措置として積極的に図っており、外国勢力の内政干渉を受けつけないように万全の措置を取ってきたはずだった。

 プーチンは、現在、大統領選のために主要政策についての所信をシリーズでいくつかのロシアの有力紙上に表明している。

 2月27日付のモスクワ・ニュース紙上で公表された「ロシアと変わりゆく世界」という題名の最新論文にも、外国勢力による国内政治への干渉に対する警戒感が正直なまでに吐露されている。この中でも「アラブの春」に対する観察には特に重点が置かれている。

 曰く、「アラブの春」は当初「肯定的な転換に対する期待として受け止められた」が、実際は「ある勢力の独占が別の勢力によるさらに攻撃的な独占へと置き換わった」だけに終わり、「状況の推移に否定的な色彩を与えたのは、国内の対立の一勢力への外国からの肩入れ、それもそうした干渉の暴力的性格そのもの」であったという。

 しかしながら、プーチンの懸念は、権力トップの座を死守する者の誇大妄想とばかりは言っていられない。

 政権側の効果的なプロパガンダの成果ゆえか、ロシア国民の間に同様の懸念を共有する傾向があるからだ。

 レヴァダ・センターによる2012年1月時点の世論調査結果によると、55%の国民が「ロシアは外国からの軍事的脅威にさらされている」と回答し、その割合は前年の47%から上昇している。

標的は新アメリカ大使?

 さらに、昨年末の議会選から今春の大統領選の間という、最もロシアが政治的にセンシティブな時期に、絶妙のタイミングで新しい在ロシア・米大使として着任したマイケル・マクフォール大使の動向にも注目が集まっている。

 もともとスタンフォード大学の政治学を専攻する教授である同大使は、30年ぶりの外交官出身でない在ロ米国大使となった。

 その前歴はバラク・オバマ政権の国家安全保障会議のロシア・ユーラシア地域担当責任者であり、特に米ロ関係の「リセット」を演出した立役者であると見なされている。