今年もあと2週間で幕を閉じる。巷にはこの時期ならではのクリスマスソングやホリデーシーズンを迎えてのメロディーが流れている。CDショップに行けば、専用コーナーがもうけられ、新旧取り混ぜてのクリスマスアルバムが並ぶ。

 テレビのCMでは、山下達郎の「きっと君は来ない~」と始まる「クリスマス・イブ」が今年も登場した。

 こうした年の瀬を感じさせる音楽を聴いて、去年のクリスマスや正月を思い出し、胸を詰まらせている人も少なくないだろう。音楽と世相ということで言えば、今年はとくに関係が深くなった。

 震災のあと、音楽の世界でもなにかできることはないかと、ジャンルを問わずさまざまな音楽家がチャリティーや手弁当でコンサートを開いてきた。現場に赴いて自分なりに音楽を届けた音楽家も有名無名にかかわらず多数いる。

 「音楽になにができるか」と、多くの音楽家が一時は無力感に駆られたことも事実だ。しかし、他人のために、あるいは社会のために、こんな音楽を、こんな歌を届けたいという思いは生まれた。それは普通の人も同じだ。

被災した人の心に響く歌とは

 震災から11日後に、私は青森の八戸からレンタカーで岩手県の北半分を取材し、併せて少しばかりの衛生用品などを現地に届けた。その途中、車のラジオから流れてくる地震、原発の新情報とともに、音楽に耳を傾けていた。

 被災した現地に向けて、あるいは被災した自分のために、また援助してくれた人への感謝の気持ちで、ラジオからはリスナーからのリクエストが続いた。よく流れていたのが「ゆず」の2人が歌う「」という曲だった。

 さびの部分が印象的で力強く、「流した涙はいつか光に変わる」といった希望が感じられるところが共感を持たれるのだろう。洋楽では、エルビス・プレスリーの「You'll Never Walk Alone」も印象に残った。

 「風や雨の中でも歩き続けよ、あなたは独りではないから」と歌う、これも力づけてくれる歌だ。

 こうした勇気づけられる歌もいいが、がんばれと言われてもかえって負担になることがある。また、言葉も邪魔になるときがある。