8日のNY市場はリスク回避が強まり、ユーロや資源国通貨は大きく下落した。きょうのECB理事会後のドラギ総裁の会見が発端。ECBは0.25%の利下げを決定したが、市場はむしろ決定を歓迎しユーロ買いで反応していた。更に3年物での流動性供給や、その際の担保要件の緩和など、新たな資金供給策も発表され、それも歓迎されている。
そこまでは良かったのだが、ECBによる国債購入拡大となると、ドラギ総裁が否定的な見解を示し、更にIMFを経由した国債購入についても、「ECBはIMFのメンバーではない。IMFを経由することは法律上非常に複雑」などと述べたことから、一気に市場の期待感は冷え込んでいる。
今回のEU首脳会議に対する市場からの要望の一つは、ECBによる国債購入拡大。それに伴いECBはバランスシートが拡大しリスクが増加するが、それを保護するうえでも、EU条約まで改正して厳しい財政規律を導入するというもの。
しかし、きょうのドラギ会見は、正論ではあるが、マーケットの期待を完全に覆す内容となってしまった。
終盤になってロイター通信がEU首脳会議の声明草案を伝え、長期的にユーロ共同債に向かう可能性やESMに銀行免許付与、EFSFとEMSの共存などが盛り込まれていたが、ドイツの高官が拒否との見解を示していることから、激しく振幅する場面も終盤に見られた。
ユーロドルは1.34台半ばから、一気に1.32台まで下落。ポンドや豪ドルも連れ安し、豪ドル円は79円を一時割り込んでいる。
◆ドル円は結局、元の位置に
ドル円は一時77.15付近まで下落していたが、77円台後半まで一気に上昇し、結局、元の位置に戻している。
本日のドル円下落について、特段の理由は見当たらない。本邦勢のリパトリ(本国回帰)や来週の米国債償還絡みなど様々な憶測も出ていた。
政府日銀が覆面介入を実施している兆候もある中、下値には常に警戒感がある。きょうの展開は改めて過度な下値追いには注意が必要ということも再認識させられる動きとなった。
(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)