大恐慌再来の危機に直面した世界経済を救出した2本の柱。金融、財政両政策に終止符の打たれる日が近づいてきた。

 過去数回の米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文には、「for an extended period(長期にわたり)」低金利を維持するという文言が記載されている。額面通り受け取るなら、政策金利の変更は半年後になる可能性が高い。

米上院、バーナンキFRB議長の再任を承認

バーナンキ米FRB議長、「出口」戦略は?〔AFPBB News

 2011年まで政策金利の変更は無いとの声も少なくない。というのは、FRBの金融政策の目標には物価の安定とともに雇用の確保がうたわれているからだ。米国の雇用環境が顕著な改善を示すまで、バーナンキFRB議長は金融面から経済を支えるはずだという見方である。

 しかし金融市場でも、政策金利に敏感な短期金利を主戦場とする参加者は疑心暗鬼に陥っている。いや、利上げが射程圏内に入り、低金利政策はまさに「出口」に差し掛かっているとの観測が浮上しているのだ。

 一方、財政はどうだろうか。

 リーマン・ショック以降の「需要蒸発」に伴い、各国はその穴埋めをすべく大規模な財政出動を展開する一方で、財政収支の悪化という代償を払った。仕方ない話だが、格付け機関は黙っていない。今回の金融危機の元凶となった証券化商品には最上級のお墨付きを与えていたくせに、国家財政に対しては箸の上げ下ろしまでうるさく口を挟む。病み上がりの世界経済に借金返済計画、いわゆる「出口」を明示せよと迫っているのだ。

 かつての大恐慌と比較される今回の経済危機が、わずか数年で全快するほど軽症であるはずがない。しかし、格付け機関は新聞などを通じて世論を味方につけ、借金を増やしてお金を使う指導者を悪人に仕立て上げ、「出口」へ向かえと促している。

 金融、財政両政策ともに出口に近づきつつある。だが、完治する前に退院して後遺症が残らないのか心配だ。

 日本経済はバブル崩壊後、「失われた10年」を経験した。地価や株価はバブル時代に遠く及ばないが、世界景気の拡大を頼みとして低成長ながらも深刻な景気後退は回避できた。一国の経済が立ち直るのに10年の歳月を要したのに、先進国を同時に巻き込んだ経済危機が数年で元に戻るほど軽症のはずもない。