自民党の「選挙の顔」。・・・だったはずの麻生太郎首相。問題発言の連発で今やメッキが剥がれ、党内の「首相批判」がタブーではなくなった。とはいえ、安倍晋三、福田康夫、麻生と政権がころころ代わり、さらに「4人目」ではさすがに厳しい。このため、今のところ “倒閣” の力学は働かず、「ポスト麻生」も見当たらない。現政権で次期衆院選を戦うか、あるいは麻生退陣で与野党による選挙管理内閣をつくるのか。いずれにせよ自民敗北は不可避の情勢となり、党内にはあきらめムードも漂う。(敬称略)
「私のほうが税金は払っている。たらたら飲んで食べて、何もしない人の分のカネ(=医療費)を何で私が払うんだ」。11月20日の経済財政諮問会議で飛びだしていた失言は、26日公開の議事録で発覚した。27日夜、麻生は「病にある人の気分を害したならおわびする」と陳謝を余儀なくされた。
麻生は「健康管理をする人としない人の差は年を取るほどつく。結果的に、医療費の増額を抑制するので、予防医学をきちんとしないと駄目なのではないか」と釈明した。しかし、心中では「何で謝らなくてはいけないのか」と反発していたはず。恐らく、麻生は正直に本音を吐露した。首相のたった一言が、どれだけ多くの人を傷つけるのか、理解できないのだ。
麻生の舌禍は止まらない。医師に対して「社会的常識がかなり欠落した人が多い」と言い放った直後だけに、与野党から批判の集中砲火を浴びた。
「沈黙は金。メッキが剥がれないように、余分なことは言わずに頑張ってほしい」と自民党の山崎拓前副総裁は山崎派総会で皮肉を交えて挨拶した。身内だからまだ穏便だ。野党は「公的医療保険制度の否定で、許されない。資質にかかわる発言」(志位和夫共産党委員長)などと一斉糾弾、首相としての適格性を否定した。
定額給付金や道路特定財源、日本郵政グループ各社の株式売却凍結などをめぐる発言でブレまくり、麻生の政策スタンスは迷走に次ぐ迷走。民主党の輿石東参院議員会長からは、「首相の一言ですべてが混乱する」と一刀両断にされた。
同床異夢の「反麻生」議連
「今日で3人目の総理大臣にお祝いを申し上げた。このままだと4回目をすることになりかねないと心配している」。11月28日の党首討論の冒頭、小沢一郎民主党代表はこう切り出した。
まさか、麻生まで政権を途中で投げ出すことはない。
と信じたいが、先行きは不透明感を増してきた。12月1日発表のFNN世論調査によると、内閣支持率は発足時より17.1ポイント減の27.5%まで急降下。半面、不支持は22.6ポイント増の58.3%に達した。しかも、「首相にふさわしい人」の質問ではダブルスコアで負けていた小沢が32.5%を記録し、麻生の31.5%を逆転。永田町に衝撃が走った。
とはいえ、自民党が「ポスト麻生」擁立に動ける状況ではない。そんなことをすれば、「衆院選前にまた総裁選? ふざけるな!」と国民の怒りが爆発するからだ。
麻生の求心力が急低下する中、中川秀直元幹事長や小池百合子元防衛相、渡辺喜美元行政改革担当相、塩崎恭久元官房長官らが、社会保障に関する議員連盟を結成に動いた。発起人は約20人。表向きは政策上の集まりとしているが、「反麻生」結集の思惑が見え隠れする。