2月24日、トヨタ自動車の豊田章男社長が大規模リコール(回収・無償修理)問題を巡る米下院の公聴会へ出席した直後(北京時間2月25日夜)、筆者は香港系フェニックステレビの人気トーク番組「Tiger Talks」に出演していた。
テーマは「トヨタ神話は終わったか?」
中国でも極めて関心の高いトヨタ問題
「トヨタ危機を通じて、中国の視聴者に自国の企業発展、消費者としての自覚などを再考してもらうための番組にしたい」と、収録2日前の段階でプロデューサーから打診があった。
終わったばかりの公聴会の映像から入り、豊田社長のパフォーマンスをどう評価するかを切り口に、議論が始まった。「トヨタ事件は米国貿易保護主義の陰謀か?」「トヨタブランドついに衰退か?」「トヨタ生産方式の終わりを意味するのか?」
最後に、「トヨタ危機は中国企業にとってのチャンスか?」と続いた。
ゲスト・観衆のコメントを大まかに色分けして紹介しよう。
「全米におけるトヨタの信用危機が蔓延してしまった状況で出席してももう遅い」
「あの程度のお辞儀からは誠意が感じられない」
「裁判における『被告』扱いに等しい。公聴会に出席しただけで十分」
「リコールがあったとはいえトヨタの品質は世界一だ」
「問題は品質ではなく、危機管理にあった。トヨタ側の対応が傲慢に映った」
「なぜ中国には謝罪に来ないんだ」
「トヨタにとって大きな打撃。取り返しのつかない困難に陥るだろう」
「中国企業はまだトヨタと並列で議論できるレベルまで達していない」
「どんなに大きなブランドでも、一夜のうちに信用が地に落ちるという真実を見せつけられた」
「危機を経てトヨタは一段と強くなるに違いない。良いものを造れば、消費者は裏切らない」
「中国企業に浮かれている暇などない。トヨタはまぎれもなく強敵だ」
といったところ。
「トヨタ社長が中国に謝罪に来る!」
中国人の目線がトヨタに向けられた第2の波は2月28日~3月2日。豊田社長が米国から直接北京に飛び、3月1日夜に緊急記者会見を開いた。
自動車の販売量で米国を抜き、世界一に躍り出た中国市場にシグナルを送り、情やメンツを重んじる中国人消費者を宥めようとした。2月26日には、中国の国家品質監督検査総局がトヨタの一部車種に欠陥があることを発表、「トヨタリスク」に関する警告を鳴らしている。