2月1日、ロシア政界でちょっとした事件が起きた。メドベージェフ大統領、プーチン首相に次いでロシアでナンバー3の権力の座にいるロシア連邦議会のセルゲイ・ミロノフ上院連邦会議議長が、プーチンの経済政策を批判し、支持しないと言明したのである。「以前は、プーチン首相を無条件に支持していたが、今はそうではない」とテレビ番組で堂々と発言した。

1年後の大統領選を控え、上院議長が大統領任期延長を提案 - ロシア

蜜月時代のプーチンとミロノフ(右)。2005年9月撮影〔AFPBB News

 ミロノフは「公正ロシア」という政党の党首であり、野党勢力とされている。だが、実際には公正ロシアはクレムリンの「プロジェクト」の1つとして結成されたとの説が強い。つまり、有権者が共産党支持に流れるのを引き止めるためにできた党、という説である。実際に、プーチン支持者が多い与党の「統一ロシア」は上院議長の投票時に彼を支持した。

 それなのにミロノフは「反プーチン」を宣言した。それを受けて「統一ロシア」は、猛反発。また、ミロノフが「統一ロシアは変な保守党」と発言し、プーチンの経済政策だけではなく「統一ロシア」のことも批判したので、「恩知らずな奴だ。彼を解任しなければならない」と党幹部の怒りはますます燃え上がることとなった。

もう10年以上続いているプーチン体制

 ミロノフは、プーチン陣営の中の1人とされてきた人物であるが、決して政治力があるとは言えない。それにもかかわらず、今回「造反」した背景には、何が隠れているのだろうか。

 ロシアは、BRICsの中で最も深刻に世界経済危機のあおりを受けた国である。それによって国家の欠陥と深刻な病気が露呈された。その病気を癒やす処方箋はあるのか、また、誰がその処方箋を持っているのか。ロシアは今、その問題に突き当たっている。

 反共革命を果たしたエリツィン時代、ロシアは様々な面で「破壊」された。その状態を立て直すことに成功したプーチン体制は、もう10年以上も続いている。