マイケル・ウッドフォード前社長の解任を巡り、精密機器大手オリンパスの経営問題がクローズアップされている。
前社長解任のきっかけとなった同社の過去の合併・買収(M&A)案件に関する詳細は他稿に譲るとして、本稿ではオリンパス株式を中長期的な視点で保有していた海外機関投資家の動向に焦点を当てる。
市場では「PBR1倍割れも視野に」の声
解任を巡る混乱が嫌気され、オリンパス株式は経営問題が表面化して以降半値以下の水準に沈んだ。本稿執筆時点でも下げ止まりの気配は見えない。
同社は医療用精密機器、特に内視鏡の世界的大手であり、新興国向けの新規需要の高まりを背景に海外の年金基金や保険会社など機関投資家からの評価が高かった。
実際、騒動前の段階では「内外の証券会社の7社程度が“買い推奨”していた」(米系運用会社)との経緯がある。
オリンパスのガバナンスに関する発表資料によれば、外国人株式持ち株比率は「20%以上30%未満」。トヨタ自動車やソニーより低いものの、企業の規模を考えれば国際優良株と分類される銘柄だ。
だが先の前社長の解任騒動以降、「買い推奨が一転、ほとんどの担当アナリストが中立、売り推奨などへ投資判断を引き下げた」(同)という。
投資判断の引き下げ続出で「香港やシンガポールのヘッジファンドが追随売りに動いた」(欧州系証券ディーラー)という短期の需給要因も無視できない。しかし、「20%以上30%未満」に該当する海外機関投資家が持ち高を減らした、あるいは見切り売りを出したことが、同社株が商いを伴って値を下げた主因であることは明白だ。
機関投資家の間では、「今後、オリンパスは(買収した)英ジャイラスののれん代の大部分を特損で償却せざるを得ない」(先の米系)との見通しが強まっている。また、「特損を出した場合、純資産のダメージが甚大な規模になるとの観測も高まっている」(同)。