2009・2010両年度の国債増発額が大きくなりかねない「火種」が、さらに膨らんでいる。
菅直人副総理・国家戦略・経済財政相は10日の閣議後会見で、2009年度第1次補正予算の一部凍結で捻出した2.9兆円を財源に、当面の景気対策として第2次補正予算案を編成して年明け通常国会に提出する方針を、正式に表明した。予算規模としては約3兆円が想定されている模様。重点項目は雇用・環境・景気の「3K」で、報道によると、雇用調整助成金の支給条件緩和や、中小企業金融支援策の増強などが取り沙汰されている。また、菅副総理は2009年度2次補正について、「(2次補正と2010年度当初を合わせた)15カ月予算の一部に振りあてる」との考えを表明し、2010年度予算案に盛り込む予定の事業の一部を2次補正に前倒しすることも示唆した(11月11日 毎日新聞)。
菅副総理は上記会見で、次のように述べたという(NQN)。
「(1次補正の)3兆円近い執行停止が決まっている。景気が自律的な回復までいっていない状況のなかでは、執行停止を今年度の補正に振り替えていくことが景気に対しての懸念を払拭することにもつながる」
「(年内にまとめる経済成長戦略については)(就任以来エコノミストから)経済に関する色々な意見をずっと聞いてきたが、なんとなくひとつの方向性が見えてきた。従来のように財政に過大に依存するのではなく、知恵と汗を出して、戦後日本の原点に立ち戻る方向性を出していきたい」
「過大な財政出動でない形で取り組める課題もかなりあるので、知恵を出していくことが重要だ。そういう姿勢がきちんとマーケットにも伝わることによって、過大な国債発行を心配しての金利上昇は『そうではない』と理解されるのではないか」
これらの発言に対する市場関係者の感想は様々だろうが、財政規律弛緩さらには財政放漫化に対する警戒感は、むしろ強まったのではないか。
筆者の頭にまず浮かんだのは、これまでの政権下でも景気対策で同じような流れがあったということである。大規模な金額を投入した経済対策が連発された後、財政事情悪化とのかね合いもあって金額を限定した経済対策を策定する流れにシフトするというパターン。大まかに言うと、宮沢喜一内閣から森喜朗内閣までは大規模対策が並び、小泉純一郎内閣では金額を絞った対策が打ち出された。その後、麻生太郎内閣で大規模対策路線が復活した後、今回の鳩山由紀夫内閣の動きである。「15カ月予算」というコンセプトにも、目新しいものは何もない。
危ういのは、2009年度2次補正は2010年度予算案で概算要求された施策の前倒し計上(フルスライド)ということではなく、新規事業が多くを占めかねない情勢のように見えることである。