2010年度予算案に対する各省庁からの概算要求が出揃った。一般会計の要求総額は95兆381億円という過去最大規模に膨らんだ。慣例にしたがって2009年度当初予算額である88兆5480億円と比べた場合は、+7.3%。2009年度当初予算の要求総額86兆1326億円と比べた場合は、+10.3%ということになる(基礎年金国庫負担割合引き上げの約2兆3000億円、経済緊急対応予備費1兆円は2009年度概算要求には含まれていなかった)。
国債費(10年物国債利回りの想定金利を2.5%と高めに見積もる一方、新規財源債の発行額を38.5兆円で仮置き)、および地方交付税交付金等を除いた一般歳出で見ると、2010年度の要求総額は54兆9929億円。2009年度当初予算額51兆7310億円と比べた場合は、 +6.3%。2009年度当初予算の要求総額47兆8417億円と比べると、+14.9%である。
しかも、金額を明示せずに各省庁が要求した「事項要求」が、地方交付税の増額(総務省)、診療報酬の改定(厚生労働省)、生活保護の母子加算復活(同)など数多く存在しており、実態としての概算要求総額は、表面の数字よりも多いと見なすことが十分可能である。
今回の概算要求、いわば「脱官僚依存」「政治主導」を掲げる鳩山政権の新しい予算編成プロセス「第1ステージ」の結果については、筆者としても、かなり厳しい評価を下さざるを得ない。
民主党が実行すると公約してきた予算編成の考え方は、まずマニフェストで公約した政策を計上してから、残る各種政策についてはゼロベースで見直した上で優先順位付けをしっかり行い、優先順位の低いものは半ば機械的に予算計上を見送ることで、歳出規模全体の膨張は必ず回避する(そして国債発行額は減少させる)というものではなかったか。
「第2ステージ」で本格的に動き出す行政刷新会議が、国土交通・厚生労働・農林水産の3省からの要求を中心に、「事業仕分け」を通じた歳出削減をどこまで断行することができるか、および査定のプロである財務省が各省庁の要求額にどこまで切り込むことができるかが、次の焦点になっている。だが、2009年度補正予算組み替えによる財源捻出が総額2兆9259億円にとどまり、事実上の目標となっていた3兆円の大台にどうしても達しなかったという事実がすでにあるだけに、楽観視することはできない。
2009年度の税収が6兆円規模で大きく下振れする可能性が浮上し、2010年度の税収が40兆円割れとなって国債発行額を大きく下回るシナリオが、現実味を増している。そうした中で、メリハリの利いた、言い換えると参院選への配慮や各種のしがらみから距離を置いたドライな歳出削減、あるいはマニフェストへの「自縄自縛」を回避した政策運営を行うことができず、税収の下振れを「不可抗力」、ないしは麻生前内閣から引き継いだ「負の遺産」と位置付けて、赤字国債発行の増発でただ単につじつまを合わせるとすれば、それはすなわち、予算編成の失敗ということにほかならない。