知名度アップ狙うハイアール(東京・銀座、中野哲也撮影)ハイアール、「白物家電」で低価格攻勢(東京・ビックカメラ有楽町店、中野哲也撮影)

日本屈指の繁華街、東京・銀座4丁目。高級ブランド店が立ち並ぶ一角を見上げると、真紅のネオンサインが目の中に飛び込んでくる。それは「Haier」の5文字。買い物客やビジネスマンは、「何と発音するのだろう」「どの国の会社?」というような顔つきで見つめている。

 「Haier」は中国・青島に本社を置く家電メーカー、ハイアールグループ(海爾集団)のブランド名。創業わずか25年、冷蔵庫や洗濯機の世界シェアでトップに立った。日本のお家芸と言うべき「白物家電」市場を今や中国企業が席巻している。

 銀座からJRのガードを越えると、ビックカメラ有楽町店本館。地下1階の家電コーナーでは、ハイアールの洗濯機に「最安値」のステッカーが貼ってある。売り場主任の中村広輔氏は「お客様の3分の2以上が「Haier」のロゴを指さしながら、『これ何と読むの?』と尋ねてきます」

 ハイアールの認知度は決して高くない。ところが小型で安価な冷蔵庫や洗濯機には、もはや日本の大手メーカーが注力していない。このため単身者やお年寄りの夫婦が、来店前にロゴを読めなかったハイアール製品を購入していく。中村氏は「1K住まいの学生さんや会社の給湯室などで使うお客様は、安くて最低限の性能でよいと割り切っている」と言う。

コンビニや釣り人に「冷凍庫」、地方には「昔の洗濯機」

 ひたすら多機能化路線を突き進む日本の家電メーカー。一方、ハイアールは日本の少子高齢化をにらみ、ニッチ市場で安価な新商品を次々に投入している。2008年度の世界売上高1兆8300億円のうち、日本では76億円に過ぎない。しかし消費不況下で、日本の売上高は2009年度も確実に2ケタ成長しそうだ。

ハイアールジャパンセールスの篠田誠副社長(中野哲也撮影)

 ハイアールジャパンセールスの篠田誠副社長は次のように指摘する。「日本の巨大な家電メーカーは不採算部門が多くなり過ぎ、ニッチ市場には対応できなくなった。ハイアールはこうした200リットル以下の小型冷蔵庫などに照準を合わせており、日本メーカーからも憎まれない。2~3年後には日本の大手は300~400リットルクラスからも撤退するだろう」

 新商品投入前、ハイアールは日本の消費者数千人を対象にアンケート調査を行い、市場のニーズを徹底的に吸い上げている。例えば、100リットル以下の小型「冷凍庫」はハイアールが日本向けに開発し、ライバルの追随を許さない。夏場だけアイスクリームの在庫を増やしたいコンビニ店長や、餌を保管したい釣りマニアの声に耳を傾け、わずか1年で商品化したという。