政権交代をかけた歴史的な戦いの日となった2009年8月30日の衆院選。テレビ各局も威信をかけた視聴率争いを繰り広げた。

衆院選、出口調査では民主党圧勝

報道機関にとっても「戦い」の日だった (衆院選当日、民主党本部で準備するカメラマン)〔AFPBB News

 民放各社は投票終了の午後8時と同時に、出口調査などを基にはじき出した獲得議席予想を発表、「民主圧勝」のテロップを流し、視聴者の関心を引き付けた。

 当日は、日本テレビ放送網が30年以上にわたって夏の恒例番組としている「24時間テレビ」の放送日に当たっていた。しかも、他社が一斉に開票速報をスタートさせる午後8時は、番組がフィナーレに向けて最高潮に向かおうとうする時間帯だ。前の晩から大量のスタッフが文字通り24時間体制で生放送に携わっているわけで、選挙日程が決まった当初は、「日テレは選挙特番できるのか」と危ぶむ声すらあった。

 ところが、フタを開けてみれば、日テレの圧勝。24時間テレビのフィナーレを引き継いで、特番内で視聴率は一時30%を超えた。

「当確」早打ちの陰の功労者は系列新聞社

 視聴率と同じく各社がしのぎを削るのが、「当選確実(当確)」速報の速さだ。午後8時と同時に、開票率ゼロの段階から当確の乱打が始まった。当確は、情勢取材と出口調査から判断されるが、出口調査には膨大な人員が必要となる。

衆議院総選挙の投票始まる、今夜にも大勢判明

「票読み」は系列新聞社にアウトソーシング〔AFPBB News

 圧倒的な人員を誇るNHKは自前で出口調査部隊を確保した。一方、民放はこの部分を系列の新聞社と連携して対応している。協力関係の強さはグループによって違うが、今回の選挙では各社がこの連携を強化する方向に動いた。例えば、テレビ朝日は選挙特番CMで、朝日新聞とのタイアップを全面に出してPRしてみせた。

 一見効率的に見える新聞・テレビの協力関係だが、要は、選挙報道の核となる「票読み」取材の新聞への委託なのだ。コストのかかる作業を自前でやらずに外部に任せるという流れは、テレビの中でも “聖域” とされる報道でも進んでいる。選挙はこの手始めに過ぎない。

「バンキシャ!」問題の余波

 今年春先、テレビ業界に激震が走った。日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」が2008年11月に放送した岐阜県庁裏金問題に関する証言が全くのデタラメだったのだ。2009年2月に岐阜県が氏名不詳のまま虚偽証言をした男を告訴し、3月に建設会社役員の男が逮捕された。