2009年8月30日投開票の衆院選は終盤戦に入った。メディアの世論調査では民主党が300議席を超す勢いを示している。余程のことがない限り民主党圧勝は揺るがず、既にメディアの関心は政権交代後の動きに移った。一方、惨敗後の自民党は再生に時間がかかりそうだ。(敬称略)

 まず、自民党のある大物前議員の選挙担当者の生の声を聞いてみよう。

 「こんな選挙は初めてだ。公示前から比例代表の投票先は民主党が自民党を上回っている。トレンドが『政権交代』になってしまっている。有権者の多くは『今度は民主党に勝たせてやろう』という気持ちなんだ」

 「小選挙区だから、自民党ではなく『自分党』で訴えたらいいって? 中選挙区制の時だったら、それで当選できたが、小選挙区制だと無理だ。どうしても、『自民VS民主』の対立構図になる。民主党の候補者の顔も名前も知らない有権者が、当日になって民主党に票を入れる雰囲気だ。個人票にも限界がある」

 「前回衆院選では今まで取ったことのない、とんでもない数字で当選したが、今回はその逆になるだろう。こっちがいくら票を固めても、投票率が上がれば数字は民主党に流れてしまう。暗くなるばかりだ・・・」

 おそらく、ほとんどの小選挙区で自民党の前職議員や選挙関係者が同じ思いを抱いているのではないか。もちろん、選挙は下駄を履くまで分からない。投票日直前まで、奇跡の大逆転の可能性はゼロではない。

吹き荒れる「政権交代」風、オセロゲームの怖さ

 自民党に配慮して一応こう書いてはみたものの、さすがに今回は自民党の惨敗は必至の情勢である。有権者の自民党に対する「不信」の方が、民主党に対する「不安」を大きく上回っているのだ。

 8月20日付の朝日新聞は民主党が「300議席うかがう勢い」と報じ、永田町に衝撃を与えた。21日付の読売新聞は「民主300議席超す勢い」、同日付の日本経済新聞も「民主圧勝の勢い、300議席超が当選圏」と伝えている。

 自民党幹部の1人は「東京都議選が民主党のピーク。衆院解散後の40日間で、民主党の勢いは次第に衰える」と期待を示していたが、「政権交代」を求める世論の風は収まるどころか、ますます吹き荒れている。

都議選、自民大敗 与党過半数割れ 民主が第一党に

都議選1人区で自民惨敗(参考写真)〔AFPBB News

 2009年7月12日の都議選は、ほとんどの選挙区が1選挙区当たりの当選者が複数の中選挙区。自民党は全体的に敗北しても、複数区でそれなりの議席を維持できた。しかし都議選の1人区、つまり小選挙区に限ると自民党は1勝6敗の惨敗を喫していた。

 一方、衆院選は当選者1人を選ぶ小選挙区300と、比例代表定数180の計480議席を選ぶ「小選挙区比例代表並立制」である。小選挙区では、51%を得票した候補者が勝利し、49%の得票者は敗北する。つまり、49%は死票となってしまう。

 これこそが小選挙区制の怖いところ。激戦区では無党派層の動きや「風」向きなどによって、勝者と敗者がころっと入れ替わる。いわばオセロゲームのように、白から黒、あるいは黒から白にひっくり返ってしまうのだ。

永田町が震撼した中日新聞の調査、森喜朗も野田聖子も・・・

 2005年の前回衆院選では当時の首相・小泉純一郎が掲げた「郵政民営化」に対し、国民の信が問われた。その結果、自民党は296議席、公明党が31議席と与党が圧勝。これに対し、野党・民主党は113議席まで落ち込んだ。