30日のNY市場は、ギリシャ懸念の一服や、強い米指標でリスク許容度改善している。ユーロは上昇し、円相場も円安の動きが優勢となった。ギリシャ議会が緊縮財政法案を完全に通過させたことや、ドイツの銀行が自発的民間関与に合意したと伝わったことでギリシャ懸念が一服している。また、この日発表になったシカゴPMIが予想以上に強い内容だったことで、現在の景気軟化は一時的との見方も台頭している。

ユーロドルは1,45台を回復し、ドル円も再び81円に迫る場面も見られた。

なお、本日はFRBの量的緩和第2弾(QE2)に伴う国債購入が最終日となったが、特に大きな波乱は見られなかった。

◆景気軟化は一時的とのポジティブな見方も台頭 

きょうは為替市場のみならず、株式市場も大幅高、原油も上昇しており、典型的なリスク選好の雰囲気が強い1日となった。

ギリシャ問題は緊財政法案が議会を通過し、EU・IMFは第1次支援第5弾を7月3日のユーロ圏財務相会合で決定するだろう。第1関門突破で一安心といったところだが、第2次支援に盛り込まれている自発的民間関与に伴うギリシャ債のロールオーバーに関しては、格付け会社が自発的と判断するかどうかなど不透明な部分も多い。自発的と判断されなければ、デフォルトとの認定になり、スキームは不成立となる。まだまだ不透明感は高い。

ただ、きょうについてはシカゴPMIの強い数字が非常に印象深かったようにも思える。シカゴの製造業といえばデトロイトが近いこともあり、自動車産業の影響が大きい。シカゴPMIは自動車産業の景況感をあらわすといっても過言ではないだろう。東日本大震災によるサプライチェーンの遮断で、米自動車産業も大きく傷つき、前月のシカゴPMIは大きく落ち込んでいた。今回の予想も前回より低いかったが、結果は予想外の改善を示し、詳細を見ても新規受注や生産が大きく伸びていた。受注残はまだ少ないが、もし米最大の製造業である自動車産業が改善傾向を強めてくれば、米景気軟化は一時的とのFRBのシナリオにも可能性が高まる。きょうの指標はそれを期待させ得る好指標だった。

ゴールドマンは米5年債の売り(利回り上昇)を推奨していた。経済指標の改善で米国債の需要が減退し、利回りが2.2%(現在1.76%)に上昇するとの見通しを示した。東日本大震災によるサプライチェーンの混乱は和らいでおり、欧州債務危機も食い止められ、米製造業活動は拡大するという。一部にはこうしたポジティブな見方も出つつあるようだ。

(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)