9日のNY市場、トリシェECB総裁会見後にユーロが急落している。トリシェ総裁の会見内容はインフレに対する強い警戒を示すなど、特にハト派色はなく、7月の利上げを十分に示唆した内容だった。ECBのスタッフ見通しで、2012年のインフレ見通しが従来のレンジ内に収まっていたことが嫌気されたとの指摘も出ていたようだが、概ね市場はトリシェ会見を織り込んでいたことから、材料出尽くし感が出たものと思われる。

米景気減速、そして、ギリシャの債務再編など巡って燻っている問題も多く、7月利上げ後のシナリオを考慮すれば、積極的に上値を試せなかったのかもしれない。ユーロドルは一時1.44台、ユーロ円も瞬間115円台まで下落する場面も見られた。

円相場は、ユーロ円は下落していたが、他のポンド円や豪ドル円は堅調な値動きとなっている。NY株や原油が反発するなど外部環境がリスク回避一服となっていたことから、円安の動きが出ていた。この日発表になった米貿易収支で輸出が過去最大だったことも材料視。

ドル円もここ数日レジスタンスとなっていた80.30水準を回復する動きが出ている。午後になって米30年債入札が実施され、落札利回りが予想を右上回ったことから、米国債利回りが上げ幅を拡大したこともフォローとなったようだ。上値も重く、レジスタンス完全突破とはならなかったが、底堅い展開も見せていた。

(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)