今年3月、パナソニックはWindows 8.1 Proを搭載した企業向けのタブレット端末「TOUGHPAD(タフパッド) FZ-G1」(以下、TOUGHPAD)を発売した。その名の通り、タフ(頑丈)さを兼ね備えており、建設現場や工場などの生産現場などでの導入が期待される。
そこで今回は、既にタブレット端末を導入しており、先進的な取り組みを見せる大手ゼネコン、大林組の担当者に実際の現場でこの最新のタブレット「TOUGHPAD」を操作してもらい、その可能性を掘り出してもらった。
グローバルICT推進室
施工ICT推進課長
堀内英行氏
2012年秋、大林組は国内にあるすべての建設現場にタブレット端末を配布した。同社の土木・建築の現場に従事する技術職社員全員に1人1台ずつ。2013年春には、数にして約3400台にのぼる。
建設業界をリードする大手ゼネコン各社のなかでも初めてとなる先進的な取り組みだ。
「現場の生産性や品質管理を確実に向上できるツールとして、タブレット端末の配布に踏み切りました」。そう話すのは、現場におけるICTの活用を推進するグローバルICT推進室 施工ICT推進課長の堀内英行氏。
同社では、2011年1月から3つの現場で試行的にタブレット端末を採り入れ、効果の検証に着手した。その後も、各種の検討を重ねて、2012年秋に本格的に導入した。
「建設現場の場合、品質管理のうえで最も重要なのは、設計図面です。それを持ち出せるのが、タブレット端末の最大のメリットです」と、堀内氏は言う。従来は、出力した設計図面を工事現場に持参していた。ときには製本された分厚い図面集を、紙袋などに入れて持っていくこともあったという。
しかし、紙の図面には、常に不安がつきまとっていた。建設現場では、工事が進む一方で、設計図面が修正されるケースが多く、出力紙の場合、それが最新のものなのかどうかを判断しにくいのだ。修正されていることを知らずに古いままの図面を持参して、工事の指示や検査に使ったらミスにつながる恐れがある。
タブレット端末の導入は、そうした不安を払拭した。現場事務所のパソコンで修正された図面は、常に現場のサーバに保存される。工事現場に出る職員は、そのたびにサーバから設計図面をタブレットに取り出すので、誰もが間違いなく最新図面を持てるようになった。
今年の4月からは図面管理にクラウドを導入し、さらに効率と利便性を高めている。これまでは、現場事務所で個々にタブレット端末に図面を取り込み、工事現場ではPDFで閲覧していた。それが現在は、図面をクラウド上で一元管理し、新規もしくは更新された図面を簡単にダウンロードできる環境になっている。
現場で不可欠な防滴・防塵・耐衝撃性を確保
屋外での視認性も高く、専用ペンで操作できる
建設現場は、基本的に屋外だ。様々な生産現場のなかでも非常に厳しい環境下にある。「そのため、タブレット端末にも防塵性、防滴性、そして耐衝撃性が不可欠です」と、堀内氏は言う。
その堀内氏に、実際の現場でTOUGHPADを手に取ってもらった。屋外で最初に画面を見たときの第一印象を、こう語る。「視認性がいいですね。屋外でも画面が見やすいのは、現場にとって助かります」。TOUGHPADは、1m2当たり約800cd(カンデラ)(※1)という高輝度な最新のIPS液晶を搭載するため、屋外でも画面が見やすい。
※1出荷時における画面中央部の平均輝度。使用状態により変動します。
今回は短時間の試行とはいえ、TOUGHPADの売りである頑丈さについても、堀内氏は感触を得たようだ。
昨秋、同社が導入したタブレット端末は防水機能が弱いため、樹脂製のカバーを取り付けている。しかし、しばらく使ううち表面に細かな傷が付き、そこにホコリなどが入り込んでカバー全体が白っぽくなってしまい、画面が見づらくなったり、撮影する写真も白っぽくなったりするという。
「その点、TOUGHPADは頑丈設計でカバーは不要ですね」(堀内氏)
もう一つ、堀内氏が便利なツールとして挙げたのが、標準で付いている「専用ペン」だ。
現場では、たいてい軍手をはめている。しかし、タブレットは指で操作するのが基本なので、いちいち軍手を取る必要があるのが現状だ。
「TOUGHPADは専用ペンを使えば、手袋をはめたままでも操作できます。しかも、この専用ペンは、画面に近付けるだけで反応するから、とても使い勝手がいい。マウス操作と指先操作の良いところを兼ね備えた機能で、感心しました」(堀内氏)。
生産現場を意識して開発されたTOUGHPADは、駆動時間が約9時間と、長時間の動作にも堪える。これもまた、タフさの一つと言える。実際、建設現場では、朝に現場事務所を出た後、一日中、工事現場で過ごすこともあるといい、バッテリーの容量は使い勝手に直結する。
また、直感的に操作できるWindows 8.1 Proを搭載する点も、特徴の一つだ。もちろん使い慣れたWindows 7も適用できる。
TOUGHPADをメインマシンとする
1人1台体制に向けた試行も検討
大林組による現場でのタブレット端末の導入は、生産性や品質管理の向上に向けたICT活用の一つの過程と見ることもできる。「以前から言っているのですが、業務効率を上げ、品質管理を徹底させるためには、“二重入力”を極力、減らすことが非常に重要です。ICT推進の究極の目的は、そこにあります」と、堀内氏は指摘する。
確かに、パソコンが普及した現在でも、あらゆる業種の様々な業務で、至るところに二重入力は残っている。現場で紙に書いたメモを、事務所に戻ってパソコンで報告書として打ち込めば、二重入力になる。会議の議事録を手書きで採り、デスクに戻ってパソコンで清書するのも二重入力だ。
品質管理に対する要求が厳しくなるに連れて、二重入力も増える傾向にあり、それが業務効率の低下を招いている。
「現在は、デスク上のパソコンとは別にタブレット端末を持つという1人2台体制ですが、1人1台ですべての業務を済ませられるのが理想です」。そう話す堀内氏は、TOUGHPADのスペックをもとに社内で検討し、1人1台につながるような試行を着想した。
それは、従来のパソコンに代えて、TOUGHPADをベースに業務をこなすという案だ。事務所のデスクで作業するときは、TOUGHPADを専用のクレードルに装着し、キーボードやディスプレイと接続して、パソコンと同じように操作する。
そして、現場に出向くときは、クレードルからTOUGHPADを取り外して、そのまま持ち出す。そうすれば、別途、タブレット端末を持つ必要はなくなり、1人1台で業務は済む。1台にすべての操作が集約されるため、二重入力の無駄も大きく省ける。
TOUGHPADをパソコンに代替できる可能性について、堀内氏はこう考える。「メモリやCPUなど、スペックは十分すぎるほど充実しており、製図ソフトのCADも普通に操作できるでしょう。パソコンと同等の操作性が期待できます」
現在、大林組ではこのアイデアに基づく試行を検討中だ。そこで成果が見られれば、タブレット端末の活用法が今後、大きく変革していく可能性もある。
TOUGHPAD(タフパッド)シリーズ
■OS:Windows 8.1 Pro Update 64ビット(日本語版)
(Windows 7 Professional ダウングレード権含む)
■CPU:インテル® Core™ i5-4310U vPro™ プロセッサー
(インテル® スマートキャッシュ 3 MB、動作周波数 2.00GHz、
インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー2.0利用時は最大3.00GHz)
■液晶:10.1型IPS液晶 WUXGA(1920x1200ドット)
(AR処理 静電容量式マルチタッチパネル+デジタイザー機能付き)
■ストレージ:SSD 128GB
■メモリー:4GB
■質量:約1.1kg (デジタイザーペン除く)
■駆動時間:(JEITA2.0)約9時間、(JEITA1.0)約13時間
【選べるシリーズ】
・Xi(LTE)対応ワイヤレスWAN内蔵モデル
・Windows 7 Professional 32ビットプレインストール済みモデル
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