互いに主役を譲ろうとしない2人の大物俳優を、限られたスペースで仲良く競演させる――。

 4K映像の入出力に対応し、20型液晶を搭載したパナソニックの「TOUGHPAD 4K FZ-Y1CH」は、そんな無理難題を乗り越えて誕生したタブレットだ。

 そのTOUGHPAD 4K FZ-Y1CHが誕生する半年以上前、開発プロジェクトリーダーである森下直人は放送関係者にこう言われた。
 

パナソニック株式会社
ITプロダクツ事業部 4Kタブレット事業推進部
プロジェクトリーダー 森下直人氏



  「4K入力もできると、もっといいんですけどね」

 発売済みの、フルHDの4倍以上の情報量の4K解像度の液晶と出力機能を持つタブレットを前にしての発言だった。

 そのタブレットはもともと、医療やデザイン業界、あるいは金融機関の窓口など、高精細な映像を大画面に写し、複数人でシェアしながら見るというニーズを持つ業界に向けてつくったものだった。しかし、3840×2560ドットのIPSα液晶の美しさ、約2.35キロという可搬性などから、放送関係者からも高い評価を得るようになっていた。

 

医療やデザイン業界、金融機関での事例多数     ※右画像提供:Plissimoビューワ(パナソニック メディカルソリューションズ(株))


  それが「4K入力“も”できると」という言葉につながった。4K出力と表示だけでなく、入力も可能なら、屋外などの撮影現場で、4Kカメラで撮影した映像を、その場でしっかりと確認できるからだ。大画面のタブレットに4K入力機能が付けば、映像制作の現場の利便性がぐんと上がるのだ。

 明確なリクエストをもらったことで森下は奮い立った。その声に応えたい。次のモデルには、4K入力の機能を持たせよう。

 では、どうやってタブレットに4K入力機能を持たせるのか。ブルーレイレコーダーなどAV畑が長い近藤敏明は、テレビで使っている4K入力のためのSoCと呼ばれる、3センチ角ほどのデバイスをそのままタブレットに持ち込むことを考えた。
 

パナソニック株式会社
ITプロダクツ事業部 4Kタブレット事業推進部
主任技師 近藤敏明氏


  ただし、すでにタブレット内部はバッテリーや回路で一杯。そこに、3センチ角とはいえ新しいチップを入れるスペースを確保するのは容易ではない。ノイズや発熱を考慮しなくてはならないので、配置にも気を使う。

 さらに、そのSoCとCPUが喧嘩することは間違いなかった。タブレットの司令塔は高速で動くCPUであり、テレビの司令塔はCPUほどは速くないがAV性能に優れるSoCなのだ。司令塔がふたりいると、その場は混乱する。主役級の、しかもペースの違う俳優がふたりいるドラマの撮影現場のようなものだ。
 


 

パソコンとテレビの同居?
発熱量は増えるが放熱ファンは減らしたい

 「テレビ用をそのまま?」

 近藤のそのアイデアを最初に聞いたとき、森下はなるほどパソコンとテレビを同居させるその手があったかと思う反面、困惑もした。発熱が気になったのだ。

 一般的にテレビは、電源に常時接続されていることから、消費電力が多少大きくても許容される製品だ。消費電力が大きければ、その分、発熱量も多くなる。
一方で、バッテリー駆動が前提のタブレットでは消費電力は小さければ小さい方がいいし、手に持って使うことを考えると、あまり熱くしたくない。

 実は森下は、4K入力には対応していない前のモデルでは2つあった放熱用ファンの数を、2つから1つに減らそうと目論んでいた。わずかでも軽くし、そしてコストを下げることで、より多くの人に使ってほしいからだ。はたして放熱用ファンを減らして軽量化はできるのか。

 近藤は、CPUベンダーとSoCベンダーの間に入って“2人の主役”の調整をすすめる一方で、映像の現場で使うのに欠かせないある機能を持たせるのに苦慮していた。

 それは、画面を指で操作しての部分拡大と縮小だ。スマートフォンでは当たり前の機能だが、20型の大画面、しかも4Kとなるとなかなかスピーディには反応せず、指の動きにスムーズに映像が追い付いてこない。これでは使い物にならない。
 

 

 指での滑らかな操作が実現しないとなると、例えば拡大縮小は、固定倍率など機能制限をかけることになってしまう。

 「そうしないとだめかもしれない…」

 森下も近藤も、内心そう予感していたが、こうも思っていた。

 「けど、格好悪い。絶対にしたくない」

 限られたスペースに入り込むSoCという新しいデバイス、そのCPUとの喧嘩、消費電力と発熱の増加。なかなかうまくいかない拡大縮小。

 こういった課題を乗り越えさせたのは、人の力だった。
 

社内外の人的ネットワークをフル活用

 テレビの技術を、パソコンの技術でできているタブレットに注ぎ込む。そのプロジェクトのために集められたのは、社内の各所で経験を重ね見識を得てきた精鋭ばかりだった。

 「よくもまあ、これだけ腕も立つけど口も立つ、かつ、負けず嫌いな人間が集まったものだ」と、誰よりも負けず嫌いな森下は思った。

 腕も立つが口も立つ、その筆頭とも言えるのが近藤だ。チップ開発に一日の長があり技術力、そしてチップを「この子」と呼ぶ愛情があるだけでなく、社内のどこにどんなチップがあり、どんな人がいるかを知っていた。だからこそ、テレビ用のチップの部門や社外のスタッフを巻き込めた。

 森下はポータブルMDプレイヤーなどオーディオデバイスの開発に長く携わってきたため「パソコンのことはまだまだ勉強中」と謙遜するが、プロジェクトのメンバーとのコミュニケーションは密にするように心がけた。自分は煙草を吸わないのに缶コーヒーを持って喫煙所に行くような姿を近藤たちは見ていた。

 「そうやって話をして、信頼して任せてくれる。でも、放置するわけではなく、ここは危ないなというところは入ってきてくれます。そのバランスがいいので、森下さんとはとても仕事がしやすいです」

 その信頼関係は、ふたりの間だけでなく、大阪府守口市にある開発拠点の外にも広がっていく。近藤はSoCの開発拠点である京都を幾度となく訪れ、森下も重要な部材の調達元である台湾に何度も通った。

 そうしていくうちに、ソフトウェアの改良が進み“2人の主役”の競演に目処が付いてきた。テレビでは主役のSoCをCPUから制御することで問題は解決し、放熱ファンも、機構を工夫することで予定通りひとつ減らすことができた。それに満足せず、コンマ何グラムを削り出す軽量化にも取り組んだ。

 そして問題の、指での拡大縮小は…

 

海外の放送局からも高い評価

 6月23日。東京・有楽町にある国際フォーラムで、世界で初めて4K入力に対応した新タブレット「TOUGHPAD 4K FZ-Y1CH」の発表会が開催された。


  多くの報道陣の前で、4K60p、HDCP2.2対応のHDMI2.0入力端子を備えていること、A3サイズをほぼ実寸で表示でき、広視野角の20型液晶を搭載していること、前のモデルに比べて50g軽くなっていることなどが説明される。

 そして、ステージではデモンストレーションが始まった。

 カメラの先には、女性のモデルがいて、カメラとその女性の間には花瓶に生けられた花がある。そのカメラはHDMIケーブルでFZ-Y1CHとつながっている。デモンストレーターがカメラを操作してFZ-Y1CHの画面で確認しながらピントを女性に合わせたり、花に合わせたりしている。表示のタイムラグは感じられない。拡大縮小も実に自然に行われている。


  その様子を森下と近藤は見ていなかった。大阪でいつも通りに仕事をしていたからだ。それでも、海外での展示会で注目されるなど、FZ-Y1CHが高く評価されていることを実感させられる場面には何度も遭遇した。指での拡大縮小を試した人から「WOW!」という反応が得られたときには、近藤は「安易な機能制限に逃げずに、みんなで徹底的に取り組んで本当に良かった」と心から思った。森下の耳には、国内だけでなく、中国やオーストラリアなど海外の放送関係者からも引き合いが来ていることも入るようになった。

 「いろんな技術の組み合わせでできたのがこのタブレットです」と近藤は言う。「初めてのものだけに困難も多くありました。例えば映像の拡大縮小は、CPUソフトメンバーとSoCソフトメンバーが2ヶ月に渡り集結し、徹底的に性能向上のチューニングに取り組みました。その成果として、指に吸い付くような操作感が達成できました。だからこそ、技術的な困難を乗り越えたときの快感は何にも代え難いものがあります」

 森下も各部署から集まった精鋭たちによる開発の期間をこう振り返る。「このタブレットは、様々なバックグラウンドを持つ僕らだからつくることができた。そう思っています」

 テレビ番組などの撮影は街中で行われることも珍しくない。見かけたら、機材に注目して欲しい。そのときスタッフが大きくて薄いタブレットを覗き込んで画像の確認をしていたら、それは「TOUGHPAD 4K FZ-Y1CH」に違いない。

※世界初:4K対応液晶パネル搭載タブレットにおいて。2015年6月23日現在。パナソニック調べ。

 

TOUGHPAD(タフパッド)シリーズ

TOUGHPAD 4K FZ-Y1CH










■OS:Windows 8.1 Pro 64ビット(日本語版)
■CPU:インテル® Core™ i5-5300U vPro™ プロセッサー2.30GHz
(インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー2.0利用時は最大2.90GHz)
■液晶:
・3840×2560ドットの高解像度
・230ppi(pixel per inch)の高精細表示
・リアルな約1677万色表示(sRGBを広くカバー)

  ※sRGB:standard RGB。国際電気標準会議が定めた、一般的なモニター、 プリンター、デジタルカメラ用の色の国際標準規格。
・20型の大画面。A3サイズの紙面をほぼ同寸で表示
・視野角176度。平面に置いても360度のどの方向からでも見える広視野角のIPS
α液晶パネル
・10フィンガー対応のマルチタッチ
■4K映像入出力(FZ-Y1CH)
・HDMI 2.0入力端子搭載。4Kビデオカメラから4K映像を高画質のまま表示可能
・Mini DisplayPort™出力端子搭載。本体から外部ディスプレイへ4K出力が可能
■ストレージ:SSD 256GB(FZ-Y1CHBBZBJ)/128GB(FZ-Y1CAAAZBJ)
■メモリー:8 GB(FZ-Y1CHBBZBJ)/4 GB(FZ-Y1CAAAZBJ)
■質量:約2.33 kg(FZ-Y1CHBBZBJ)/ 約2.30 kg(FZ-Y1CAAAZBJ)、薄さ 12.5 mm

  ※平均値。各製品で質量が異なる場合があります。
■駆動時間:(JEITA 2.0)約1.5時間
 

 

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